萩尾望都 「ポーの一族」

ポーの一族 文庫版 コミック 全3巻完結セット (小学館文庫)

ポーの一族 文庫版 コミック 全3巻完結セット (小学館文庫)

ポーの一族 (1) (小学館文庫)

ポーの一族 (1) (小学館文庫)


とても面白かった。

いろんな短編が重層的につながっているので、話の筋は追いづらいのだけど、全体として何かとても不思議な雰囲気と、なんといえばいいのだろうか、メリーベルをはじめとした登場人物たちの生の輝きとその追憶のようなものが、とてもよく描かれていたと思う。

私が生れる前に書かれた作品なのだけど、ある意味新鮮だった。

たぶん、あらすじだけ読んでもちっとも面白くない、細部や全体に何か形容することの難しい良さのある作品だったと思う。

たぶん、当時の読者たちの多くはあまり難しいことを考えもせずに読んでいたのかもしれないし、そう読んでもたぶんそれなりに面白いんだろうけれど、私が読んでいて興味深いし胸につまされるのは、メリーベルを失った後もずっと生き続けねばならないエドガーの悲哀である。

しかし、作品中には、十分そのテーマは完全には解明されないままだったようである。

リーベルを失ったエドガーがなぜ生き続けることができたのか、本当にその後に立ち直ることができたのか。
できれば、いつかまた続編が世に出てそのあたりの話もやって欲しい気がする。

ただ、降霊術を拒否し、激しく憎んだあたりを見ると、エドガーはきっと安易な癒しやよりすがりは拒否して、その悲しみや孤独を毅然と選んで生き続けたんだろうなぁ。