- 作者: 小松茂美
- 出版社/メーカー: 戎光祥出版
- 発売日: 2005/10
- メディア: 単行本
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とても良い一冊だった。
平家納経の全三十二巻のすべての写真が載っていて、その美しさにあらためて深い感銘を受けた。
著者は、二十一才の時に平家納経の実物を見て感動し、それ以来、なんと六十年間も平家納経の研究に打ち込んでこられた方。
さすが、とてもわかりやすい解説で、ありがたかった。
私は平家納経についてほとんど詳しいことは知らなかったので、この本を読んでいて驚いたのは、願文や般若心経などの、平家納経の中のある部分は、なんと平清盛の直筆とのこと。
私は、高校生だった時、厳島神社の宝物館で紺紙金泥の平家納経の実物を見てその美しさにとても感動した覚えがあるが、それが平家納経のどの部分だったのかさっぱり覚えていなかった。
今回、この本を読んで、それが般若心経の部分だったこと、そして平清盛の直筆だったことを知り、深い感銘を受けた。
本当にすごい字で、清盛は稀に見る教養人だったことが字の風格からもうかがわれる。
また、この本によれば、法華経の提婆品の部分は、清盛の弟の頼盛の直筆とのこと。
写経の文字を見ながら、平家物語の登場人物たちの在りし日の姿や願いが髣髴とされる気がした。
「尽善尽美」と言うそうだが、本当に美の限りを尽くした華麗さに、ただただ感嘆する。
いつかすべてが揃った実物をこの目で見てみたいものだ。
私がもし億万長者になれたら、平家納経のような美しい装飾経を企画してつくりたいなぁとしみじみ思った。
本当に平家納経は、日本の国宝であるのみでなく、人類の至宝と思う。
平家は、これと厳島神社をつくっただけでも、本当に偉大だと思う。
ただ、これほどの美しい装飾経をつくりながらも、わずかの期間で栄華の絶頂から滅亡へと至った平家の物語は、あらためて世の中の無常を思わざるを得ない。
これほどの功徳を行っても、神仏は平家を守ってくれなかったのだろうか。
いや、せめても、滅びる前にこれほどのものを遺せて、平家は本望だったのだろうか。
そのうち、あらためて平家物語を読んでみようと、平家納経の写真の数々を見ながら、思った。
厳島神社にもあらためて参拝したい。