絵本 「少年の木 ~希望のものがたり~」

少年の木 ~希望のものがたり~

少年の木 ~希望のものがたり~


柳田邦男さんが翻訳しているので読んだのだけど、とても良い絵本だった。


鉄条網のすぐ近くで、がれきの中から芽吹いた、何の樹かわからない芽を、少年がせっせと世話して育てる。


やがて大きくなり、ぶどうの木になるが、心ない兵隊たちに引き抜かれてしまう。


が、再びそのぶどうは、鉄条網を挟んで向こう側にも、こちら側にも、散らばった種から育っていく。


そして、こちら側でも、向こう側でも、少年や少女がせっせとぶどうの木に水をやり、その成長を喜び、小鳥たちもやってくる。


いろんなことを思わされ、考えさせられる素敵な絵本だと思う。


自分は、あるいは心なく引っこ抜いてしまい、鉄条網をつくり、がれきの山をつくってしまう人間か。
あるいは、かすかな芽を見つけ、優しく育てていく側の人間になるのか。


各人が、その選択を本当は迫られているのかもしれない。
そして、気付かぬうちに忘れてしまっているのかもしれない。


大事なことを思い出させてくれる一冊と思う。