赤ちゃんポストについて

今日、熊本県にある慈恵病院の田尻由貴子さんの講演を聞いてきた。
田尻さんは、慈恵病院で、蓮田院長とともに中心となって、「こうのとりのゆりかご」、つまり通称「赤ちゃんポスト」を設置し運営してきた方である。

2007年に設置以来、そこに多くの赤ちゃんや子どもが託されてきたそうだ。

設置当初は、批判や抗議の声もとてもたくさん寄せられたそうだが、ひとつひとつ丁寧に説明し、命を守るためのものだということをよく説明し、やっと少しずつわかってくれる人も増えてきたそうである。

こうのとりのゆりかご」の設置の前には、生まれてすぐの赤ん坊が遺棄されたり殺害される事件が相次いでいたそうで、それに心を痛めた蓮田院長や田尻さんがドイツにある匿名で子どもを託せる施設を視察し、それを参考にしてつくったそうである。

生れてくる子を匿名で託そうとする母親にはいろんなケースがあるそうで、聞きながらなんとも気の毒で胸の痛む事例もあったし、多くの場合が非常に深い心の傷をその後も負っていくそうである。

田尻さんの、とても優しい明るい語り口と、話の内容に胸を打たれた。

慈恵病院の「こうのとりのゆりかご」に今まで子どもを託した親の九割は熊本県以外の人だそうである。
また、電話やメールの相談も受け付けているそうで、寄せられる相談の七割は、やはり熊本県以外だそうだ。
遠い距離だと、相談や助けを求められても、すぐに助けにいけない場合もあるそうである。

しかし、今のところ、同様の施設はまだ日本にはないそうだし、国も協力してくれないそうである。

昨今は、親になる準備のできていない親も多いそうだし、家族の絆や地域の助け合いが欠如している場合も多いそうで、一人で悩みを抱えて苦しんでいる妊娠中の女性も多いそうである。

慈恵病院では、親になる人のために栄養や育児の指導や相談もしているそうだし、いろんな相談にも応じているそうだが、本来はもっと「こうのとりのゆりかご」と同様のシステムも含めて、国も力を入れていくべきと思った。

それにしても、第一次内閣の時の安倍さんが、「このようなものは許されない」と赤ちゃんポストができた時に赤ちゃんポストの設置に対して言った様子が資料映像に流れていて、この人は昔からこういう人だったんだなぁとあらためて思った。
レミゼラブルでたとえれば、ファンティーヌに対して何の同情も抱かず、嘲笑する人やジャベールみたいなもんなのだろう。

子育てがもっと円滑にできるような社会や地域や国のありかたももっと工夫しないといけないとあらためて思ったし、責任をもって子どもを育てる大人が増えることが大事であるのと同時に、さまざまな事情で不幸にして子どもを育てられない状況に至った場合、遺棄や殺人に至らぬように、慈恵病院の「こうのとりのゆりかご」のような仕組みを本当にもっと複数増やしていくべきと思われた。