絵本 「チピヤクカムイ」

チピヤクカムイ

チピヤクカムイ

手島圭三郎さんのアイヌユーカラについての絵本はどれもすばらしいけれど、私はその中でもこの絵本が最も好きだ。

チピヤクとは、オオジシギのことで、神の鳥。

神々が、人間の世界を天上から見てとても美しいようなのでもっと見たいと考え、オオジシギに様子を見てくるように命じる。

オオジシギは虹のような大気圏を通って地球にやってきて、とても美しい自然を眺める。

そこで描写される、アイヌユーカラが讃える大自然の美しさと、それをとても美しい絵にしている手島圭三郎さんの版画には、ただただほれぼれとするばかりである。

オオジシギはあまりにも地球が美しく、それに見惚れ、また木の実などを食べて過ごしているうちに、あまりにも帰りが遅くなり、神々の世界に帰ろうとすると、神々が怒って地上にまた叩き落とされる。

そこで冬を過ごすが、薬草を見つけ傷を癒し、春になって食べ物を食べて、また元気を回復し、再び神々の世界に帰ろうとするが、地球もなごりが惜しく、オオジシギは高く飛んではまた低く飛んできて、鳴き続けるのだという。

このアイヌユーカラを読んで、それほどにこの地球は美しい世界だったんだなぁということに、あらためて鮮烈な感動を覚えた。
実際、そうなのだろう。
そして、そうした自然を守っていかないとなぁと思った。

北海道はかつては全土がそのような土地だったのだろうけれど、今は本当に手つかずの自然というのは、知床半島ぐらいかもしれない。
せめても今ある自然は残していきたいものだ。