絵本 「シベリアの豆の木」


これは素晴らしい絵本だった。
思わず涙。

ジャックと豆の木の物語に出てくる豆は、サン・ジュアンという品種だそうである。
敗戦後、シベリアに抑留された香月泰男さんは、乏しい食事の中、この豆がジャックと豆の木の話に出てくる豆だと気付く。
故郷にいる子どもたちはもう大きくなって、ジャックと豆の木の話も読んだだろうかと思いながら。

そして、日本に帰れる時が来た時、ポケットに五粒しのばせて持って帰った。

庭に埋めた五粒の中で、一粒だけ芽をだし、ジャックと豆の木のようにすぐに大きくなることはなかったが、十年後には花を咲かせ、実がなり、大きな木となっていった。

「二度と戦争をしてはいけないという祈りが、この豆にはやどっているのだよ」

と香月さんは子どもたちに教えた。

そして、一生、絵を描き続けた。・・・

いつか、ぜひこの豆の木をこの目で見に、香月泰男さんの美術館に行きたいと思った。

本当に素晴らしい絵本だった。
これほど胸を打つ絵本は、めったにないと思う。