- 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
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先日、テレビであっていたので、ジブリの「コクリコ坂から」を見た。
昭和三十年代ぐらいが舞台で、さすがジブリで映像はきれいだった。
たぶん、賛否両論ある作品で、ノスタルジーがつまらないという人も、それがなつかしいという人もいるのだろう。
私の母から伝え聞くあの時代の雰囲気は、たしかに、こんな感じかもなぁという気は見ていてした。
私の若くして亡くなった伯母は学園のマドンナだったそうで、当時はたぶん若干こんな感じだったのかもしれない。
主人公の妹に能天気なキャラが出てくるが、うちの母は若い頃はたぶんこんな感じだったのだろう。
それにしても、見ていて連想せざるを得ないのは、「オールウェイズ三丁目の夕日」の昭和三十年代ノスタルジーと、実は兄妹(だけど話の展開でセーフ)という「冬ソナ」的韓流ドラマ(あるいは往年の日本の赤いシリーズ)。
つまり、あまりにも筋そのものはどこかで聞いたことのあるもののちゃんぽんということだ。
その点が、陳腐なものが嫌いな人には嫌だろうし、それでもなつかしいのが良いという人には良いということなのかもしれない。
また、こういう良き若者と良き大人というのは、あの時代もどれだけいたのかわからないが、今日日いったいどれだけいるのだろうということは思わざるを得ない。
若者の勇気と抗議が実を結び、予定調和的に無事にハッピーエンディング、ということは、昔もかもしれないが、今日はとても難しいだろう。
この「コクリコ坂」の理事長さんや、ナウシカのクシャナ殿下のような理解ある権力者というのは極めて稀少なもので、たいていはこちらの実力がよほどない限りささいな妥協すら引き出すことは難しい。
あんまり厳しい現実をつきつけて若者を意気阻喪させても問題なので、ジブリアニメではこのような結末の方が良いとも思うが、その点いささか非現実的な気もしないこともない。
世の中の権力者というのは、コクリコ坂の理事長のようなものではなく、せいぜいナウシカのナスリムかラピュタのムスカのような中身で外見がこの理事長のようなものだと心得た方が、子どもたちもあまりこれから先がっかりせずに済むかもしれない。
このいささかメルヘンチックな昭和三十年代ノスタルジーから何を汲み取るか。
たぶん、それは各人次第で、単なるあの頃は良かった式の非現実的なノスタルジーでは一時のなぐさめにしかならないだろうし、かといってナウシカに比べてつまらなかったというだけではもったいない気もする。
これは我々の親や祖父母の時代の話だと受けとめて、自分たちにはまた自分たちの違った時代と現実がある、そのうえで、あの時代のピュアさはどこかしら受けとめていきたいと、というのが、見ていて思ったことだった。