あるエピソード オリソン・マーデンの本の中に載っていた話

これは、オリソン・マーデンの本の中に載ってエピソードだけど、なかなか胸を打たれた。


昔、ある若者がいた。
その若者は、事業に行き詰まり、事業を畳むか、自殺するか、思い悩んで、公園のベンチに座りため息をついていた。


たまたま、隣のベンチに、ホームレス風の年配の男性が座っていた。
どちらともなく、なんとなく会話を交わすことになった。


その年配の男性は、今は落ちぶれているが、かつては高い教育を受けた人だろうと思わせる賢い目をしていた。


年配の男性は、若者がなぜ落ち込んでいるのかを尋ねた。
若者が事情を話すと、年配の男性は以下のような話をした。


「かつては自分も、今のあなたか、それ以上に羽振りが良く、仕事も富も順調だった時期があった。
しかし、今のあなたのように、ある時、行き詰ることがあった。
その時、それまではほとんど飲んだことがなかったウイスキーをたまたま少し飲んだ。
それは、落ち込んでいた状態から私を立ち直らせ、活力や元気をくれたような気がした。
実際、しばらはくそうだった。
私は、ウイスキーのおかげで、多大なストレスや千々に乱れた心から一時的に立ち直り、仕事に向かい、順調になることができた。
だが、それは長くは続かなかった。
ある時、私はアルコールを手放せず、常に欠かせなくなり、そのためにかえって以前にも増して活力や注意力が失われつつあることに気付いた。
何度もやめようとした。
が、できなかった。
その結果、本当に行き詰まり、何もかも失うことになった。
この状態にまでなった私から見れば、今のあなたの「行き詰まり」など、なんでもない。
あなたの「今」が羨ましい。
人間は、健康な身体と知性さえあれば、どこからでも、何でもできる。」


若者は、その年配の男性の話を聞き、いたく感じ入るものがあった。
その場で、できる限りのことを感謝として年配の男性にしてあげたあと、若者は猛然と自分の持ち場に戻り、奮闘努力して、事業を立て直し、以前よりもはるかに成功するようになった。…