BSで「王と妃」という韓国の時代劇がずっとあっている。
もうすぐ終わるようである。
このところ、録画だけしてずっと見れていないので、私が見終わるのは放送が終わったあともだいぶ経ってからになりそうだが、このやたら長い時代劇大作で、三つ、心にのこっているセリフがある。
ひとつは、
「人生は放たれた矢のようなもの。振り返ってはならない。」
というセリフ。
「王と妃」の主人公で、女性でありながら絶大な権力を振った、李王朝史上稀にみる女傑、仁粋大妃が何回か作中で言ったセリフである。
なかなか考えさせられる、名ゼリフだと思う。
もうひとつは、
「権力は強者が握るべきもので、弱者が握ってはなりません。
なぜならば、弱者が権力を握ると、世の中が混乱し、血が流れるからです。
ですので、必ず強者が権力を掌握しなければなりません。」
というセリフ。
首陽大君の軍師となり、癸酉靖難というクーデターを成し遂げ、その後も絶大な権勢を仁粋大妃とともに振い続けた韓明澮のセリフ。
癸酉靖難の時は、「生殺簿」という殺害すべき人物の名前を書いたリストを韓明澮が作成し、その中に長年の友人の李賢老まで含めていた姿には本当に戦慄させられた。
しかし、首陽大君や韓明澮ぐらい容赦がなく冷徹な人物であってこそ、安定した統治というものを築けるのかもしれないと、ドラマを見ていると思わされたものだった。
もうひとつは、仁粋大妃の夫の桃源君のセリフで、
「そなたが山を見たいと思えば山が見える。海を見たいと思えば海が見える。」
というセリフ。
ドラマでは、権謀術数に明け暮れる仁粋大妃とは対照的に、桃源君は心優しい繊細な人物で、父親の首陽大君が甥の端宗を廃位して王位を簒奪し世祖として即位することに心を痛めている人物として描かれていた。
父と妻の専横をなんとか和らげようとするが、病に倒れて早死にする。
このセリフは、仁粋大妃が何事も権力や欲の観点からのみ考え計算するのをたしめなて、病床から諭すセリフ。
桃源君の死に世祖も仁粋大妃も嘆き悲しみ、仁粋大妃の回想の中でしばしばこのセリフが繰り返された。
三つのセリフとも、なんというか、考えさせられるセリフだ。