「料理は準備が90%で、お客さんの前でつくったりするのは10%ぐらい」
という話を、以前、あるお店で聞いて、なるほどーっと思った。
たしかに、そうかもしれない。
お店の料理というのも、下ごしらえや準備が一番大事だし、一番大変なのだろう。
料理もそうかもしれないが、この話は、人生の万事にも応用できそうな話である。
論文や小説も、材料の準備や思考の発酵などが90%で、実際の執筆の苦労は10%ぐらいかもしれない。
商品の開発や、科学の発明なども、私には正確なことはよくわからないが、おそらくそうなのではないかと思える。
だとすれば、新しい時代や社会というのも、そのようなものなのではないか。
ふとそんな気もする。
江戸時代から、日本が明治維新に移行するのにも、何もペリーの黒船が来ただけでは無理だったと思う。
維新の志士たちの奮励努力ももちろんあったろうけれど、そのはるか前から、多くの蘭学者や国学者や陽明学者たち、農民一揆の指導者や参加者たち、そんな今は名前もほとんど知られていない人たちを含む、数知れない多くの人たちの長い長い活動や思いの積み重ねがあって、はじめて御一新も、明治日本の飛躍的な文明開化や近代化もありえたのだろう。
何事も一朝一夕にはいかないとすれば、日々孜々として努め、準備90%と万事心得、焦らずに功を急がずに一歩一歩生きていくのが、時代や社会や個人の人生にとっても、最も大事なことかもしれない。