以前、NNNドキュメントで「奪われた故郷」という、北方領土についての特集があっていた。
http://www.ntv.co.jp/document/back/201008.html
当時北方四島に住んでいた方の半数以上がすでに亡くなったとのことである。
先祖の墓が眠る地、幼い頃に過ごした故郷にもう一度立ちたい、という思いを語っている方たちのインタビューを聞いていて、なんとも心が痛んだ。
この番組によれば、敗戦後十年ぐらい経ったときに、ソビエトが二島返還を提案し、重光葵ら当時の日本の政府高官は二島返還に傾き、相互の合意ができかけていたそうである。
しかし、アメリカが横槍を入れ、四島返還を日本が撤回してソビエトと妥協するならば将来の沖縄返還はないと主張し、日本側としてはやむなく北方領土問題の早期解決を断念せざるを得なかったという。
そもそも、千島列島にソビエトが侵攻したのは、ヤルタ会談でルーズベルト米大統領がスターリンに千島列島を引き渡すので日ソ中立条約を破棄して日本に侵攻する密約を結んだことに基づくそうである。
そうこう考えると、北方領土問題で単純にロシアのみを責めればいいという問題ではなく、実はアメリカの影が北方領土問題にも大きく関わっているのだと改めて認識させられた。
アメリカとしては、かつては日ソ、今は日ロがあまり接近せず、むしろくさびを打ち込んでおいた方が自国にとって望ましいという考えがあるのだろう。
そのことはアメリカの立場としてはあるのかもしれないが、日ロが今もそのアメリカの意向に踊らされる必要は必ずしもないと思う。
北方領土問題の解決についても、実は日本自身が、内面的な対米従属から脱却して、自分自身で自主的に思考し決断する外交理念や外交政策を樹立することが一番大事なのかもしれない。
この番組では、元北方四島島民の方が、四島でいつまでも帰ってこないならば、せめて二島だけでも、ということをおっしゃっていた。
法的に考えれば北方四島はすべて日本のものであり、義はこちらにあり、非は向こうにあるといえども、四島で千年経っても解決できないならば、現実的にまずは二島返還と平和条約締結に進むのがいいのかもしれないとこの番組を見ていて思えた。
とりあえず、二島返還で、他の二島にも比較的自由に渡航ができるようにし、返還された側の二島にもロシア側から比較的自由に行き来ができるような仕組みをつくりあげていくことはできないのだろうか。
もともとは、千島も樺太も北海道も、日ロのどちらでもないアイヌの地・アイヌモシリであったことを考えれば、いつまでも国境問題でもめるよりは、柔軟で自由な思考で相互に歩み寄ることはできないのかと思われてならない。