先日、ムハマド・ユヌスの講演会に行ってきた。
ユヌス先生はバングラデシュの、ソーシャルビジネスの提唱者で、4年前にノーベル平和賞を受賞されている方。
ずいぶん昔に、たしか宮崎あおいがバングラデシュを訪れる番組に登場されて、いつか直接御話を聞いてみたいと思っていた。
本当、立派な風格のある方で、御話もとても良かった。
同時通訳もあったけれど、とてもわかりやすい英語だった。
ビジネスには二種類あり、利益のためのビジネスと、問題を解決するためのビジネスがある。
両方大事だが、後者がなぜか多くの場合、無視され、学校でも教わることがない。
メイクマニーとチェンジザワールドの二つのビジネスのうち、前者ばかりになってしまっているのが今日の世界だが、今日の世界が抱える多くの問題を解決し、若者が本当に欲しているのは、後者の方である。
といった話をされ、貧しい人々への無担保融資の御話や、安価なヨーグルトや安価な靴を提供するビジネスを始めたり、携帯電話の事業を始めて、どれもバングラデシュなどで成功してきたことを御話されていた。
すごいものだ。
貧困や環境問題などの今日の世界の問題を解決するのに、政府はたしかに力はあるけれど、十分に力があるわけではない。
しかし、私たち市民はパワフルである。(We citizens are powerful.)
ということを言われていて、なるほどーっと思った。
また、ソーシャル・ビジネスは、きちんとビジネスをし、きちんと税金を支払うし、税金を免れるべきではない、という話もされていて、とても興味深かった。
政府に頼らず、かつ単に利益を求めるわけではない、貧困などの問題を解決するためのソーシャル・ビジネスを多くの市民が活発に起こし、きちんとビジネスとして採算もとれ、税金も普通のビジネスと同じようにきちんと支払うのであれば、これほど国家にとっても社会全体にとってもすばらしいことはあるまい。
市場の活力を害うことなく、多くの問題を解決できる。
実際、そんな不可能そうなことを実現しているのだから、ユヌスさんこそ本当の革命家であり草莽崛起と言えるのかもしれない。
「今日できないからといって、明日できないとは言えない」
「皆不可能と言うことを、私は信じない。違うように考える。」
「信じなければ実現しない。信じれば実現する。」
「目標を持っていれば、いつもすぐに実現するとは限らないけれど、しばらく別の道を辿ったり、違う方法を試したり、一年後、二年後ふっとこういうことだったのかとわかったりし、また立ち戻り、いつかは必ず辿りつくことができる。」
などなどの言葉も、とても心に残った。
本当に、偉大な魂だった。
ユヌスさんの本、いろいろ読んでみよう。
あと、パネリストとしては、福岡の市長さんやJR九州の会長さんや、サグラダファミリアの外尾悦郎さんも来ていた。
外尾さんはさすがに良いことを言われていて、
「誰も知らなくても、自分はやったという感覚。その感覚こそが幸福である。」
ということをおっしゃっていて、利益や形よりも、達成感や自分が意味のあることをしたという感覚こそ幸福につながる、ソーシャルビジネスにはそうした要素もある、という御話をされていて、なるほどーっと思った。
ソーシャル・ビジネスは、まだその言葉も、考え方も、十分に社会に浸透しているわけではないけれど、これからの時代の鍵のひとつかもしれない。
各人が各人の立場から、アンテナを張って、ソーシャル・ビジネスに自分なりにトライしてみること。
それこそ、これからの社会にとって最も大事なことかもしれないし、今の世における「草莽崛起」のあり方ということかもしれない。