
- 作者: 森鴎外
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2007/12/14
- メディア: 文庫
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恥ずかしながら、やっと森鴎外の『阿部一族』『興津弥五右衛門の遺書』『佐橋甚五郎』を読んだのだけれど、予想外に面白かった。
なんといえばいいのだろう、文体の中にこもっている精神が、独特な、すごいものがあった。
おそらく、鴎外は、近代化や文明化の中で失われていった、かつて日本にあったものを描こう、記念にとどめよう、としたのだろう。
全く現代とは異質な、現代日本人には理解できないような、かつての武士たちの生態や生死のありかた。
我々の先祖たちはこうした世界を生きていたんだなぁと、なんとも不思議な気がする。
個人的には、『興津弥五右衛門の遺書』が面白かった。
何が面白いと説明しずらいのだけれど、生死ということを現代人と全く違うところから感じて生きていて、そして人はこのようにも生きれるし、生きていたんだなぁということを、善し悪しを抜きにして、ある種の感慨を持って眺めることができるからだと思う。
佐橋甚五郎の話も興味深った。
実際のところはどうだったのだろう。
正直、これほどの歴史小説は、その後山ほど書かれた日本の歴史小説の中にも、あまり多くはないのではないか。
鴎外の魅力に溢れた一冊だと思う。