萩尾望都 「訪問者」

訪問者 (小学館文庫)

訪問者 (小学館文庫)


ある方から以前いただいた一冊で、とても面白かった。

表題作は『トーマの心臓』の番外編で、これも面白かったのだけれど、他の三作品もとても心に残る良い作品だった。

「城」の中の、人は自分の城を自分の石を積み重ねて心の中につくるけれど、それは白と黒の両方がそろってないと本当はいびつなもので、良い心も悪い心もしっかりバランスよく自分で理解して整理していないと、どちらかだけというのはありえないというのは、なんだか考えさせる話だったし、たしかになぁと思った。

また、第二次大戦のパリが舞台が「エッグ・スタンド」の、生も死も愛もきわどいところにある、というメッセージは、なんだか胸に迫るものがあった。

「天使の擬態」も、良い作品だった。

萩尾望都は、人生の難しさや人間のあやうさや業について、さらっと鋭く描いているところが本当にすごいもんだと思う。