坂田靖子 「堤中納言物語」


面白かった。

堤中納言物語は、いくつかの短篇が集めてあるのだけれど、どれもちょっと笑えるような、なんだか不思議な気持ちにさせられるような、そしてどれも切れ味鋭く(?)突然唐突に途中で終わるっぽい感じが、なんともいえぬ余韻や味わいや面白さがある。

極めつけは「虫めづる姫君」で、「二巻に続く」という意味のことが書いてありながら、もともとその二巻が存在しないらしい。
失われたというわけでもなさそうだ。
虫めづる姫君のその後が気になる。
そういえば、宮崎駿はこの虫めづる姫君にインスピレーションを受けて風の谷のナウシカを書いたと昔読んだ記憶がある。

他にも、どの話も、面白かった。
平安時代というのは、のんびりしているような、得体がしれないような、不思議な世界だと思う。
ある意味、「わが失いし世界」なのだろう。