- 作者: パトリシアマキサック,Patricia C. McKissack,Jerry Pinkney,藤原宏之
- 出版社/メーカー: 新日本出版社
- 発売日: 2010/09/01
- メディア: ハードカバー
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とても素晴らしい絵本だった。
あとがきに書かれているが、著者の少女時代の思い出を元にしているらしい。
1950年代の南部のアメリカ。
主人公の少女のパトリシアは、「あの場所」に行きたいと思う。
そこは、とびっきりのお気に入りの場所。
おばあちゃんが、「どんなことがあっても、胸をはって歩くんだよ」と言って送り出してくれる。
それで、バスに乗っていくが、バスには「黒人指定席」(COLORED SECTION)にパトリシアは乗らなくてはならない。
前半分の白人席はがらがらにあいているのに、そこには座ってはならない。
バスを降りて、公園の中を歩いて行き、噴水の近くのベンチに座ろうとすると、そこには「白人専用」(FOR WHITES ONLY)と書かれている。
街のレストランには、「白人のお客さま以外お断り」(WHITES ONLY)と書かれている。
誰か有名人が来たらしく、人混みに巻き込まれてホテルのロビーに入ってしまうと、「肌の黒い人間は立ち入り禁止だぞ!」とものすごい剣幕で叱られて追い出される。
映画館の前を通ると、黒人は正面ドアからは入れず、裏口から入って黒人席にすわるように言われる。
途中、慰めてくれる黒人の知り合いや、白人の知り合いもいるのだけれど、南北戦争の後に百年近くたちながら、唖然とする現状に、読みながらパトリシアならずともこちらが心が折れそうになる。
しかし、ついに、「あの場所」つまり図書館の前に立つ。
おばあさんは、そこを「自由への入り口」と呼んでいた。
図書館の入り口には、「誰でも自由に入れることができます。」(ALL ARE WELCOME)という文字があるのを、パトリシアははっきりと見つめる。
という物語。
南部の図書館はかつては白人専用だったが、1950年代に、ナッシュビル公共図書館運営委員会は、人種に関係なく使えることを議決した。
そのことがあとがきで書かれる。
深い印象が残る、とても良い絵本だった。