絵本 「わたしのとくべつな場所」

わたしのとくべつな場所

わたしのとくべつな場所


とても素晴らしい絵本だった。

あとがきに書かれているが、著者の少女時代の思い出を元にしているらしい。


1950年代の南部のアメリカ。

主人公の少女のパトリシアは、「あの場所」に行きたいと思う。
そこは、とびっきりのお気に入りの場所。

おばあちゃんが、「どんなことがあっても、胸をはって歩くんだよ」と言って送り出してくれる。

それで、バスに乗っていくが、バスには「黒人指定席」(COLORED SECTION)にパトリシアは乗らなくてはならない。

前半分の白人席はがらがらにあいているのに、そこには座ってはならない。

バスを降りて、公園の中を歩いて行き、噴水の近くのベンチに座ろうとすると、そこには「白人専用」(FOR WHITES ONLY)と書かれている。

街のレストランには、「白人のお客さま以外お断り」(WHITES ONLY)と書かれている。

誰か有名人が来たらしく、人混みに巻き込まれてホテルのロビーに入ってしまうと、「肌の黒い人間は立ち入り禁止だぞ!」とものすごい剣幕で叱られて追い出される。

映画館の前を通ると、黒人は正面ドアからは入れず、裏口から入って黒人席にすわるように言われる。

途中、慰めてくれる黒人の知り合いや、白人の知り合いもいるのだけれど、南北戦争の後に百年近くたちながら、唖然とする現状に、読みながらパトリシアならずともこちらが心が折れそうになる。

しかし、ついに、「あの場所」つまり図書館の前に立つ。

おばあさんは、そこを「自由への入り口」と呼んでいた。

図書館の入り口には、「誰でも自由に入れることができます。」(ALL ARE WELCOME)という文字があるのを、パトリシアははっきりと見つめる。

という物語。

南部の図書館はかつては白人専用だったが、1950年代に、ナッシュビル公共図書館運営委員会は、人種に関係なく使えることを議決した。
そのことがあとがきで書かれる。

深い印象が残る、とても良い絵本だった。