- 作者: バシャンティラハーマン,ローリ M‐エスリック,Vashanti Rahaman,Lori McElrath‐Eslick,山本敏子
- 出版社/メーカー: 新日本出版社
- 発売日: 2010/04
- メディア: 大型本
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主人公の黒人の少年は、図書館で本を借りるようになる。
やさしい本は自分で読めるが、やや難しい本は大人に読んでもらうように図書館で言われる。
少年のお母さんはとても良い母親で、忙しい仕事の合間にとてもかわいがってくれるし、聞かせてくれる御話もとても面白い。
しかし、少年が、本を読んでくれるように頼むと、なぜか話をそらして、別の話にしたり、仕事で疲れているのでまた今度と、あるいは他の大人に頼むように言われる。
いつも本を親切に読んでくれた近所の大学生が引っ越していなくなってしまい、少年はいよいよお母さんに頼むと、お母さんは泣き出す。
少年は、よほど疲れているんだろうと思い、驚いて慰める。
翌日、日曜日で教会に行き、最後に何か祈りたいことはないかと聞かれると、大勢の人がいる前で、その母親は、自分には字が読めないので字が読めるようになりたい、ということを言う。
少年はびっくりする。
周囲の人々は、職業訓練学校のことを教えてくれ、自分もそこで覚えたという人々もいた。
それから、そのお母さんは字が読めるようになり、少年に本を読んで聞かせる日がついにやってきた。
字が読めないことを、教会で大勢の人の前で言うことは、さぞかし勇気がいることだったろう。
しかし、そうしたからこそ、答えてくれる人々も大勢いた。
それまでは、自分の子どもに字が読めないことを知らせまいとしていたこのお母さんの心情を思うと、なんとも言えない気持ちになるが、ハッピーエンドで本当に良かったと思う。
一昔前のアメリカでは、文字が読めない黒人女性は、おそらくはそれほど珍しくはなかったのかもしれない。
そうなる背景には、貧困やさまざまな事情があったのだろう。
思い出すと、自分はごく当たり前に、幼い頃に母がよくいろんな絵本や本の読み聞かせをしてくれた。
世界のさまざまな昔話や、ギリシャ神話なども、それで知ったものだった。
当たり前のことだと思って育っていたけれど、それは本当は、この世界では必ずしも当たり前ではない、ものすごく恵まれたことだったのかもしれない。
いろんなことを考えさせれるし、胸打たれる、とても良い絵本だった。