絵本 「氷の海とアザラシのランプ」

氷の海とアザラシのランプ―カールーク号北極探検記

氷の海とアザラシのランプ―カールーク号北極探検記

とても良い絵本だった。


この絵本は、1913年に北極探検のために向かったカナダのカールーク号を描いている。
特に、その北極探検隊に同行した、イヌピアク族の夫婦とその二人の子どもの四人家族が主人公である。


カナダの北極探検隊は、北極を目指すが、その途中で流氷にカールーク号が閉じ込められ、立ち往生する。
イヌピアク族のお父さんは、極地で生き残るためのさまざまな知恵を出し、あわてることなく、狩りをせっせと行って過ごす。
奥さんも子どもたちも、全くあわてることがない。
おばあさんからもらったロウソク立てにロウソクを入れて灯せば、そこに安心できる場所がすぐにできる。
また、アザラシの皮にカリブーの毛をつめてつくったボールで、小さな二人の子どもは遊ぶ。


船は流氷についに破壊されてしまうことになる。
しかし、それまでに荷物はすべて氷の上に取り出し、一行は氷の上を渡り、救援の船が来るまで自活する。
凍てつく氷の中、なかなか狩りで食べ物も得られない時もあり、栄養失調に主人公のお母さんがなりかける時もあったが、逞しいお父さんが無事にアザラシを仕留めて難を乗り越える。
また、カナダの探検隊たちも、イヌピアク族の家族と仲良く、大変な状況下でも冷静に、時には楽しく、過ごす。


ついに最後は助けが来て、無事にみんな生きて帰れる。


イヌピアク族のまだ小さな女の子二人も、親が落ち着いているせいだろうか、いたって落ち着いていて、それなりに楽しく、大変な状況下でも冷静に過ごしている様子が素晴らしかった。


実話が元らしいが、本当に素晴らしい絵本だった。
このイヌピアク族の一家のように、大変な状況下でも落ち着いて、できることを最善を尽くしつつ、淡々と楽しく過ごすことができたら、それが一番の智慧のある人ということなのだろう。
心に残る一冊だった。