写真集 「東日本大震災 写真家17人の視点」

東日本大震災―写真家17人の視点。アサヒカメラ特別編集

東日本大震災―写真家17人の視点。アサヒカメラ特別編集


東日本大震災の半年後ぐらいに出された写真集。

17人の写真家が、それぞれの視点で撮影している。

311から二年近く経った今読み直してみると、あらためていろいろと考えさせられることが多い。

事故直後の圧倒的な自然の猛威の傷跡のリアルさを感じさせられる写真の数々には、あらためてあの時の津波地震の恐ろしさを思わされた。

その一方で、福島原発事故の影響で不安な表情をされている方々や、酪農などの仕事が奪われた方々の様子の写真もあり、これらは今って現在進行形のことなのだと思った。

311は、自然災害と、原発事故という人災の二つが複合的に絡まりあったことで、防災のためにはそのどちらにもいろんな取り組みや工夫が必要なのだろう。
そのためには、一つの視点だけでなく、いろんな視点から記録に残していくことも必要だし、いろんな観点から問題意識を持つことが大切なのかもしれない。

この写真集で、私が特に印象に残ったのは、広川泰士さんの写真で、直接被災地の被害状況などを映さず、ただ被災地の何組かの家族写真を写してある。
その家族写真は、どれも笑顔で、震災にも負けずに、かたい家族の絆を持っている様子がうかがわれた。
実はそれこそが、最も尊いことで、大切なことであり、守るべきものなのかもしれない。

今も福島原発事故は現在進行形のことであり、いったいいつになったら本当の意味で収束できるのかわからない。
被災地の復興もまだまだ課題は多い。
にもかかわらず、私も含めて、他の地域に住む人間は、一年経ち、二年経つと、早くもいろんなことを忘れがちである。

そうした意味において、この本やその他の東日本大震災に関連した写真集や書籍は、これからこそ、時折読み直されるべきものだと、あらためて思う。