池井昌樹・植田正治 「手から、手へ」

手から、手へ

手から、手へ

良い詩と写真の本だった。


池井昌樹さんの詩に、ずっと昔に撮られた、植田正治さんの戦後の頃の日本のさまざまな写真を合わせて一冊の本になっている。


詩も、写真も、とても良かった。


戦後のかつての時代の日本において、いかに父や母たちが子どもたちを愛していたか。
そして、いかにすくすくと真っ直ぐにその子どもたちが育っていたか。


そんな昔なつかしい、かけがえのない時代が髣髴とされた。


たぶん、私の親の世代が、この写真に出てくる子どもたちと大体同じ世代なのだろう。
私の子ども時代は、もう日本が経済大国になった後の、だいぶ違う風景だったし、この時代を直接知らないけれど、なぜかなつかしいような気がする。


「やさしい子らよ
おぼえておおき
やさしさは
このちちよりも
このははよりもとおくから
受け継がれてきた
ちまみれなばとんなのだから
てわたすときがくるまでは
けっしててばなしてはならぬ」


きっと親の願いというのは、いつの時代も変わらないものだし、そうしてつながってきたいのちのバトンとしては、どの時代の景色も、きっと直接見ていてなくても、何かしら自分とつながっている、大事ななつかしいもののひとつなのかもしれない。