- 作者: ムハマド・ユヌス,猪熊弘子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/10/24
- メディア: 単行本
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ソーシャル・ビジネスについて、ノーベル平和賞を受賞したバングラデシュの経済学者・実業家のユヌスさんがわかりやすく説いている本。
ソーシャル・ビジネスとは、利益ではなく、社会への貢献・社会的便益の最大化のために活動する企業のことである。
しかし、NPOやチャリティと異なり、ちゃんとかかった総費用は回収するし、投資家に元本をきちんと返す。
きちんと持続可能な経営を行う。
しかし、通常の利益や利潤の最大化を求める企業と異なり、利益や利潤はかかった費用分のみ求め、社会のために働くという企業のことである。
そんなもの、実現可能なのか?と思うけれど、ユヌスさんは実際にグラミン・ファミリーというさまざまな業種の企業を抱えた企業グループを創設・運営して成功している。
特にその中核をなすグラミン銀行は、無担保で貧しい人にもお金を融資するという画期的な手法で、バングラデシュなどで劇的に多くの人々が貧困から脱出する手助けとなってきた。
返済額もほぼ全額に近いきちんとした経営をなしとげてきた。
ユヌスさんは、市場の自由には賛成だし、グローバル経済にも賛成だという。
ただし、自由な市場に利潤追求だけではないソーシャル・ビジネスがたくさん現れないと現代社会の抱える問題は解決しないし、グローバル経済が経済的帝国主義なってはならないと言う。
「社会的な意識で動く企業」=ソーシャル・ビジネスの活躍によって、人類は貧困をなくすことができるし、不平等の解消や「成長のジレンマ」の解消にも向かうことができる。
そう熱く語るユヌスさんのメッセージを読んでいたら、なんとも希望と夢が私の胸にも吹き込まれてくるように感じた。
小さな政府・大きな社会がこれからの時代の潮流になるように思われるけれど、その時に、「大きな社会」を成り立たせるためには、ソーシャル・ビジネスが最も重要な要素になるのかもしれない。
利潤のみを動機とする人間に対する経済学の見方は、人間の本質をとらえそこなっている「概念化の失敗」であり、人間は一次元的存在ではなく、多次元的存在だと説くユヌスさんのメッセージは、とかく利潤第一主義にのみなりがちな現代社会にとって、まさに福音だと思う。