孫子・呉氏

孫子・呉子 (中国の思想)

孫子・呉子 (中国の思想)


ひさびさに本棚から引っ張り出して読んでみたのだけれど、やっぱりとても面白かった。

孫子は中国の古典中でも、最もためになる本の一つではないかと思う。

要するに、孫子が説いているのは、「事前の見通し」の大切さであり、責任倫理なのだと思う。

態勢を万全にすること。

勝利は人がつくり出すものであり、自然の成り行きでえられるものではない、
「勝は成すべきなり」、

勝つための条件をなるべく多く整えること。

こうした責任倫理としての思惟と努力こそが、孫子の説くことなのだと思う。
今の世にも、最も大事なことだろう。

また、勢いを重視することや、実をもって虚に勝ち、奇と正を縦横無尽に組みあせることなど、いろいろインスパイアされる部分も多い。

自然な勝ち方こそ最上で、目立つ勝ち方はたいしたことはない、人に気づかれぬほど自然に勝つこと、そのための勝ちうる条件を自然なほどに充実して整えていくことこそ最上だという教えも、本当になるほどっと思う。

孫子の知恵に学ぶことは、今なおとても多いと思う。

なお、この本には、孫子のみでなく、他の中国のいろんな兵法書の抜粋も載っている。

呉子の、「必死則生」、つまり必死になってこそ生きる道も開ける、という言葉は心にのこった。

また、私は個人的に尉繚子がとても面白く感じる。
吉凶占いを迷信だと喝破し、徹底した合理的な思惟と人事を尽すことに主眼を置く尉繚子は、現代でもオカルトにこっている人々が多いことから考えれば、これほど昔の人物なのにはるかに賢く合理的な人物だと思う。
また、「上満下漏」、つまり上層階級は富み栄えて下流は貧乏な国は滅びると指摘しているのも、まったくこの平成の日本には耳の痛い言葉のではないかと思えた。

司馬法もなかなか面白かった。

孫子尉繚子は、繰り返しよく読もうかと思う。

十年ぶりぐらいに通読して、あらためて貴重な古典と思った。