- 作者: 岩尾清治
- 出版社/メーカー: 西日本新聞社
- 発売日: 2005/04
- メディア: 単行本
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面白かった。
すごい人生だなあと思った。
楢崎弥之助さんは、かつて「国会の爆弾男」と言われ、社会党の国会議員として鋭い質問を自民党政府に常に行い、政府の機密情報を独自の調査で明らかにし、しばしば自民党政府の心胆を寒からしめた人物。
以前、私が大学生の頃、知り合いの年配の方が、自分は昔は日本社会党を支持していた、楢崎弥之助はすごかった〜、と熱っぽく語ってくれたことがあり、何分私の生まれる前の出来事ばかりなので知らないことが多く、いつか調べてみたいと思いながら、随分と思えば時が経ってしまったものである。
もっと早くこの本を読めばよかったなあ。
博多の老舗の呉服問屋に生まれ、学生時代はバンカラな水泳選手として鳴らし、生涯の師である松本治一郎と出会い、周囲の反対を押し切って奥さんと駆け落ちのようにして結婚し、特攻隊から終戦で生き残って帰ってからは反戦や平和のために命を賭けんと志して、いろんな運命の偶然によって政界に身を投じ、終始一貫権力と闘いながら清貧の清廉潔白な生き方を貫いた人生は、そのまんまドラマや小説にできるんじゃないかと思うぐらい。
今の福岡空港が米軍の板付空港だったことや、基地返還闘争を楢崎さんらが戦後に闘ったからこそ米軍から返還されたことなども、この本を読んでてあらためて知ってへえ〜っと思った。
楢崎さんは、いろんな情報公開や追及を国会で行う際には、その筋からいろんな嫌がらせや脅迫や、落としいれようとする罠もずいぶんと受けたらしいけれど、そんなのをものともせずに闘い続けた姿勢は、ほんにすごいなぁと思った。
党派を超えて、楢崎さんが自民党の人々とも幅広い交友や友情を持っていたこともすばらしいと思った。
戦地で安倍晋太郎と一緒でそれ以来仲が良かったというエピソードや、山村新治郎や山口淑子との交友も興味深かった。
「きけわだつみのこえ」の宅嶋徳光さんと近所でおさななじみの親友というエピソードも、とても興味深かった。
楢崎さんは、たぶん天性の勘というか、政治についての理屈ぬきの筋や道理や先々がよく見えた人だったのだろうと思う。
あとから考えれば実に的を射ていたことも多々。
たいしたものだなあと思うと同時に、野党が楢崎さんの言うとおりの方向に行けば、だいぶ日本の歴史も違ったのではないかという気がした。
福岡も、昔はこんなにすごい政治家もいたのだなぁ。
「この道は遠けれど、この道をえらびたるなれば」
「この命生きる限り」
といった言葉は、ほんに重みがあるなぁと思う。
党派を超えて、なるべく多くの人が読んだらいいんじゃないかなあと思う本だった。
利害打算ではなく、筋や義に生きる人生というのは、後世の人間の見習うべきものなのではないかと思った。