- 作者: 朝日新聞社,朝日新聞出版
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2011/04/28
- メディア: 単行本
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とてもわかりやすく3.11からの一ヶ月をよく整理してまとめてあり、あの期間を正確に把握しようとする際にとても参考になる資料と思う。
東日本大震災は、20世紀以後に確認された大地震の中では、世界史上で四番目の規模。
関東大震災の45倍、阪神大震災の1450倍の規模の大地震だった。
57万人が一時避難した。
報道写真の数々を見ても、圧倒的な自然の猛威による被害に、あらためて絶句する。
これほどの被害を受けながら、そしてそれから一カ月の間、繰り返し大きな地震を再度受けながら、日本はよく連帯し、秩序を守り、協力し合い、災害復旧や救助や復興に本当によく努めてきたと思う。
ほぼ同じぐらいの規模の大地震・津波だったスマトラ沖地震では、インドネシアで二十二万人、スリランカで六万人が亡くなっていることを考えれば、日本がこれほど大震災を受けながらはるかに少ない死者・行方不明者数で済んだことは(もちろんそれでもあまりにも多い人数で絶句するけれど)、自治体や政府や自衛隊・消防隊・警察・ボランティアなどの実に見事な働きがあったからだと思う。
救出された方の人数は、2万6666人とあるが、これほど多く救出できたことはすごいと思う。
阪神大震災と比較した時、迅速に、しかも十万人規模の自衛隊を派遣できたことが大きかったと思われる。
この本には、3月11日からの動きが実によくまとめてあって、今から振り返るのにも役に立つのだけれど、
3月11日の項目を見ると、
14時46分 三陸沖に大地震発生
14時50分 危機管理センターに官邸対策室を設置。関係閣僚らを緊急招集。
首相が、1、被災状況の確認。2、住民の安全確保、早期の避難対策。3、ライフラインの確保、交通網の復旧。4、住民への的確な情報提供に全力をつくすことを指示
15時14分 政府が緊急災害対策本部を設置
15時27分 菅首相が「自衛隊は最大限の活動をすること」と北沢防衛相に指示
16時57分 菅首相が官邸で会見。国民に呼びかけ。原子力施設にも言及。
19時3分 原子力安全対策本部会合。原子力緊急事態宣言を発令。
21時23分 政府が福島第一原発から半径3キロ以内の住民に避難指示、半径3〜10キロ以内の住民に屋内退避を指示。(翌日5時44分避難区域を10キロに拡大)
とある。
よく、菅総理を罵倒する人々が「初動の遅れ」ということを特に根拠も挙げずに言い募るが、どう見てもものすごく迅速な動きではなかろうか。
あるいは、震災後四分後に出した指示を、あと一分か二分早くしろと言いたいのだろうか。
首相の現場視察がベントの遅れだと言われたことも後に事実無根であることが判明したし、今回の事故の拡大の原因だと騒がれた海水注入の中止については中止という事実そのものが存在しなかったことがのちに判明した。
デマに流されず、いかにこの期間に菅総理や政府が動いたか、きちんと把握するためにも、参考になる一冊だと思う。
あと、この本を読んでいて、けっこう日銀が活発に動いて市場に大量の資金供給をしていることにあらためて気づく。
これほどの大事態があったのに、日本経済がともかくも大過なく今に至っているのは、政府や日銀の采配が見事だったことと、日本経済の底力をよく示すことだろう。
一部の人間は、残念なことに、連帯や助け合いや協調より、悪罵や流言飛語や妄想からの憎悪で足の引っ張り合いばかりをしようと今に至るまでしているが、そんな者は日本人にとってごく一部の例外であり、
いかに日本がこの震災において、これほどの大きな悲しみと被害に遭いながら、英雄的な奮闘をしたか、この本は如実に示している。
他の新聞から出ているものと合わせて、この震災の貴重な記録として、貴重なものと思う。