二重被爆者を笑い者に BBCが謝罪

二重被爆者を笑い者に BBCが謝罪
http://news24.jp/articles/2011/01/22/10174621.html

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イギリスの「BBC」が、広島と長崎で2度にわたり被爆した男性をお笑い番組で取り上げた問題で、BBCは、日本大使館の抗議に対し「不適切だった」と謝罪した。
 番組では、広島と長崎で2度被爆し、去年、死去した山口彊さんについて「世界一運が悪い男」と紹介。原爆が落ちた後、山口さんが電車で長崎に戻ったことを説明し、スタジオが笑いに包まれる場面もあった。この番組に対し、日本大使館は「不適切で無神経」だとして書面で抗議した。
 一方、BBCはNNNの取材に対し「被爆体験について日本人の感情を傷つける不適切なものだった」とコメントし、近く、日本大使館に正式に謝罪文を送るとしている。
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そのBBCの番組を見ていないので正確なことは言えないけれど、記事から察する限りだと、なんともひどいものだと思う。

もちろん、日本のお笑い番組もしばしば他の国の人に対して心を傷つけるような振る舞いをしてきたかもしれないので、あんまり人の国ばかり責められないのかもしれないが、なんとも不快な出来事である。

このような出来事の背後にある、イギリスの一般的な原爆に対する無知を思うと、なんとも暗澹たる気持ちになる。

イギリスはアメリカと異なり、日本に直接原爆を落とした国ではない。
しかし、そもそもアメリカを対独戦争に引っ張り込むためにアメリカに対日戦争をけしかけた国であるし、大戦中はアメリカとともに連合国の中心だったわけで、アメリカの原爆投下に対して全く無関係というわけでもなかろう。
しかも、今に至るまで長い間、NPTの中で特権的な核保有国の地位を占めている。

保有国のイギリスの、この核兵器に対する認識の浅さを見ていると、やっぱり先の大戦戦勝国の核保有国は、自分たちの頭上に一、二発核が炸裂しないことには、人の痛みがわからんのじゃないかという気がしてくる。

とはいえ、いちおうBBCは謝罪しているので、全く理解できないわけでもないし、無神経で無道徳というわけでもないのだろう。

そういえば、去年の八月六日に、new23の特集番組で二重被爆について取り上げてあり、山口さんの最後の語り部としての姿や様子も番組で映っていた。
その番組では、アメリカの高校生が二重被爆の体験者の方の話を聴きに来て涙を流している様子や、「アバター」の監督のキャメロンさんが、山口さんのお見舞いに来ている様子も映っていた。
アメリカにも、中にはまともな立派な心の持ち主もいるのだと感心させられた。
きっと、イギリスにも探せばそうした人はいるのだろう。

BBCも、もし本当に謝罪の気持ちがあるならば、new23のその特集を翻訳して放映したり、あるいは自分たちできちんと原爆についての特集番組を制作して放映したらいいのではなかろうか。

人の痛みのわからない人間は、わかるようになるために同様の苦しみがいずれ輪廻の中で起こるものだとすれば、そのイギリスの番組の製作者やその番組を見て笑い転げた人々は、いずれ二重三重かそれ以上に、原爆が頭上で炸裂するかそれを上回るような苦しみが、よほど慚愧懺悔して悔い改めない限り、その人生にこれから先起こるかもしれない。