Nスペ 非正規労働者を守れるか

二年ほど前、Nスペで「非正規労働者を守れるか」という番組があっていた。

http://www.nhk.or.jp/special/onair/081215.html


日本の働く人の三分の一が非正規労働者
非正規労働者の多くが、セーフティネットからこぼれ落ちている。
健康保険・雇用保険・失業保険もうまく機能していない。

そんな様子が、暗澹とした気持ちにさせられる悲惨な実例から、いくつも浮かび上がらされていた。

日本も、いつからこんな国になってしまったのだろう。
希望格差社会、というよりは、もはや絶望社会なのかもしれない。

そんな日本のあり方と対照的な、オランダの様子も特集されていて、興味深かった。

オランダは、90年代に首相のウィム・コックらのリーダーシップのもと、非正規労働者への社会保障を手厚くする方向に梶を切った。
もちろん、かなりな議論はあったようだが、今は社会的なコンセンサスができているようである。
その結果、非正規労働者も、同一労働であれば正規雇用の労働者と賃金は同一、かつ手厚い失業保険があり、収入の70%が最長で三年間失業期間中は支給されるという。
また、非正規労働者から抜け出せるように企業が金を出して職業教育を受けさせ、正規労働者にするシステムもあるらしい。

そうしたオランダの政策は、派遣労働を認めた上でセーフティネットを充実させるという意味で、フレキシビリティ&セーキュリティで、「フレキシキュリティ」とか言われているそうだけれど、日本の現状に比べてはるかに絶望も希望の格差も是正されているように思われた。

オランダがウィム・コックらによってそうした非正規雇用者に手厚い社会保障を行う方向に改革を進めているちょうどその頃、日本は愚民が小泉さんを歓呼の声で迎えて非正規雇用をどんどん野放しにセーフティネットもなく推し進める、改革というよりも改悪としか言えないような社会づくりに血道をあげていた。
その結果が今の体たらく。

民度が違うのだろうけれど、オランダの指導者と国民のレベルが本当にうらやましく思った。
もう一回、蘭学のつもりでオランダに学びなおすことが日本には必要なのかもしれない。

ただ、オランダはそうした社会保障を実現するために、日本に比べてかなり高い消費税率であるようだが、食品など生活必需品の消費税率はかなり低く抑えられているようだ。
日本も、一律に消費税をあげるのではなく、生活必需品とそれ以外などの細かな配慮が必要であろう。

また、ゲストで出演していた湯浅誠さんが言っていたけれど、

日本で社会保障の実現のために消費税率を上げるということであれば、最初に消費税が導入される時に高齢化社会の福祉のためにといっていたのが、この二十年、どんどん社会保障は削られ、高齢者等の自己負担率は著しく高まっている、そのことについての反省や説明をきちんとしないと、単なる増税は受け入れがたい、

ということで、まったくそのとおりで、共感した。

自民党の政治家が、高齢化が進んで医療費等が増大しているので、云々みたいなことを言っていたが、

問題はただそれだけではなくて、自民党の国家運営が完全に失敗し、政官財の癒着の中で、無駄な公共事業や官僚の天下りやらで、膨大な国費が無駄に使われ、その結果国家財政が逼迫してきたことが一番の原因だろう。

そうした国のあり方を改め、厳しく責任者たちの責任を明らかにしないことには、単なる増税がとんでもないことであることは間違いない。

にしても、なぜこんな国になったのだろう。
いろんな時点で、もっと選択肢はあったはずだが。
民度が低く、とんでもない指導者を単なるワイドショーの人気投票感覚で選び続けると、このような社会になっていく、という、ごく当たり前のことを学習するために、日本はあまりにも高い痛い代償を支払ったということだろう。

これ以上、そうした現状を続けないためにも、オランダ等を見習い、過去の日本の誤った施策を正して、少しはまともな国に、世直しの方向に、日本も遅まきながら梶を切って欲しいものだ。


(その後、日本は政権交代が起こったけれども、必ずしも十分な抜本的な非正規労働者への社会保障制度改革や労働市場の改革は進んでいないように思う。まだまだこれから日本がすべきことは数多くあると思う。政治の今までのあり方へのアカウンタビリティも不十分なままだ。)