モーパーゴ 「希望の海へ」

希望の海へ

希望の海へ

本当に感動した。
すばらしい本だった。

私はこの本を読むまで、イギリス・オーストラリアの間の「児童移民」について知らなかった。
第二次大戦後、何千人という孤児や身寄りのない子どもが、強制的にイギリスからオーストラリアに移民させられ、送られた先ではしばしば過酷な目にあったという。

また、この本を読むまで、オーストラリアもベトナム戦争に参加していたということを恥ずかしながら知らなかった。

この本の主人公は、児童移民としてオーストラリアに送られ、その先でひどい施設で過酷な目に遭う。
イギリスからずっと一緒に来た兄貴分の親友と二人で施設を脱走し、親切な人に助けられて大自然の中でやっと束の間幸せな時期を過ごし、そのあと二人で造船所でまじめに働いていたが、不況とある事件のために失業し、兄貴分は不慮の事故で死んでしまい、そのあとベトナム戦争に行くことになり、深い心の傷を負う。

しかし、すさんだ生活のあとで、たまたまめぐりあった女性と幸せな結婚をし、娘も一人生まれる。
児童移民としてイギリスからオーストラリアに渡る時に、姉が贈ってくれた鍵をいつも首にかけて、ずっと今まで持ってきて、いつか姉を探して会いに行きたいと思っていたが、主人公は病気のために死んでしまう。
娘のアリーが、まだ十代の女の子だけれど、父の代わりに父がつくった舟に乗って、海を渡って大冒険をして、イギリスまで伯母を探しに行く。

モーパーゴならではの生き生きした素晴らしい文章と、その中に深いメッセージと内容が盛り込まれていて、本当にラストは泣かされた。

多くの人にお勧めしたい、素晴らしい作品だった。