- 作者: 柳田邦男
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2013/06/21
- メディア: 単行本
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素晴らしかった。
柳田邦男さんの文章の深さは、やはり他に比類がないと思う。
本当に考えさせられる、魂の糧となる一冊だった。
特に印象的だったのは、
「いくつになっても創めることを忘れない。」
という日野原重明さんのことばと、
「言葉は、いのちの営みの泉から沸々と湧き出てくる波動」
という柳田さん自身のことば。
「ゴドーを待つ」の話や、「熟柿主義」も考えさせられた。
人間や人間社会の本質的なことをとらえた言葉は中世までに書かれていて、近現代はその変化形、「変奏」に過ぎない、というのも考えさせられた。
「日常のなかの異邦人」という言葉も、とても考えさせられた。
誰かの心に生き続ける「死後生」という言葉も心に残った。
問うのではなく、こたえる。
引き受ける。
という、フランクルの『夜と霧』をめぐる言葉もとても心に響いた。
考える種がいっぱいつまった、素晴らし一冊だった。
また、柳田さんが政府事故調の委員をしていた時に、毎朝、あいさつをしても、事務局の高級官僚たちは挨拶もせず、顔も向けずに無視していたという話には、とても驚いた。
さぞかし、柳田さんや菅さんたちは苦労だったろうと思った。
人間性が磨滅した機械のような人々や、それによって押しつぶされ、すりへっていく現代社会だけれど、柳田さんやこの本の中に紹介されているような、本当の人間のことばを蓄え紡ぐ人々のおかげで、なんとか日本も人間らしい国に保たれているし、それらのことばを大事にしていくことが、この国を少しでも良く変えていくということなんじゃないかと思った。