- 作者: 水木しげる
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2013/04/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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とてもわかりやすく、面白かった。
鴨長明は、今風に言えば就職に挫折し、また大地震などの自然災害に非常に深刻な影響を受けたようである。
その一方、和歌や琵琶を弾くことが大好きで、かなりその道も究めたが、どうもそれによって成功することができたわけでもなかったようである。
いろいろと不如意なことがあって、よく知られているように山の奥に庵をつくって住んで方丈記を書いたわけだが、単なる隠遁者というよりは、自由に自立して生きたい、人を傷つけたり羨んだり競争して生きる生き方はしない、という選択だったのだと思う。
この漫画の末尾には、方丈記の原文も載っていて、かなり久しぶりに原文も読んだけれど、あらためてとても面白かった。
方丈記の原文に即して言えば、「はぐくみあはれむと、安くしづかなる」ことを願って生きること、つまり、人を大切に愛して育て、そして自分の心が安心して静かであることの二つを大切にすることが、鴨長明がさまざまな試行錯誤や不如意や思索の末に到達した人生の目的だったのだと思うし、それはとても共感させられる。
自然災害に対する無力感もさることながら、当時における源平の内戦と権力争いと、建設や創造よりも破壊に狂奔する世の中の仕組みや姿に対して、鴨長明は異議申し立てを行いたかったのだろう。
あらためて方丈記の魅力に目をひらかせてくれた、良い一冊だった。