
- 作者: ブリッグズマーティンジャクリーン,メアリーアゼアリアン,Jacqueline Briggs Martin,Mary Azarian,千葉茂樹
- 出版社/メーカー: BL出版
- 発売日: 2000/01/01
- メディア: 大型本
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南北戦争がもうすぐ終わる頃のアメリカのバーモント州の田舎。
そこに、ウィリーことウィルソン・ベントレーは生れた。
ウィリーは雪が大好きで、母からもらった古い顕微鏡で雪を観察するのが大好きだった。
そのあたりは豪雪地帯で、誰も雪をめずらしいともなんとも思っていなかった。
しかし、ウィリーは、雪の結晶には一つとして同じものはないこと、
そして、この世のものとは思えないほど美しいことを、なんとかして他の人にも伝えたいと思った。
とはいえ、せっかく親に見せてあげようと思っても、持っていく間に融けてしまう。
ウィリーは親に頼み込み、ごく普通の庶民の家なのだけれど、家の貯金をはたいて、当時世界でも最新式の顕微鏡付きカメラを十七才の時に買ってもらう。
それから、工夫を重ねて、ついに雪の結晶を鮮明に撮影することに成功した。
幻灯機をつくって雪の結晶のスライドを見せたり、多くの人に雪の結晶の美しさを伝え続けた。
半世紀の間、ひたすら雪の結晶を撮影し続けた。
写真集が出版されたりもしたが、収入をはるかに上回る支出を、雪の撮影のためにウィリーは私財をはたいて費やし続けたそうである。
地元の人々はウィリーを愛し、村の真ん中に記念碑がたてられた。
さらに、没後四十年に、地元に博物館が経った。
この絵本は、そのベントレーの、平凡にして非凡な生涯をとてもよく描いていて、胸打たれる、素晴らしい絵本だった。
その一瞬にしか存在しない雪の結晶の美しさ。
そのことを愛するというのは、いわばその瞬間瞬間の時を愛するのと同じなのかもしれない。
自然やいのちへの限りない慈しみと相通じるものがあればこそ、多くの人が、自然とベントレーに心ひかれるようになり、語り継ぐようになったように思われた。
ベントレーのように、何か心から愛するものを、ひたすら一筋に打ち込んでいくと、そこには非凡な仕事ができあがり、のちの人の心を耕し豊かにしてくれるものになるのだろう。
私は恥ずかしながら、この絵本を読むまで、ベントレーの写真については何も知らなかった。
この一冊を知ることができて良かった。
なお、ベントレーの雪の結晶については、以下に動画やサイトもある。