圓尾雅則 「電力・ガス」


電力・ガス〈第2版〉(日経文庫 業界研究シリーズ) (日経文庫―業界研究シリーズ)

電力・ガス〈第2版〉(日経文庫 業界研究シリーズ) (日経文庫―業界研究シリーズ)


以前、ある方から勧められて、それで読んでみたのだけど、簡潔適切に電力・ガス業界のことがまとめてあって、とてもためになった。


311以前の本だけど、役に立つことは多いと思う。


いろいろ、へえ〜!と思った。


特に、けっこう意外だったのが、都市ガスとプロパンガスの普及比率はどちらもほぼ同じ二千六百万戸で、都市ガスが普及しているのは国土面積でいえばわずか5%とのこと。
プロパンガスってけっこうシェアが大きいんだなぁ。


あと、何気に、火力発電の中で石炭の割合が近年増えていたことに驚いた。


電力五部門や、ベース電源とピーク電源、九つの電力会社の簡潔な概要や、311以前における電力自由化の部分的な流れや電力政策の変遷など、わかりやすく書かれていた。


IPPが1995年に導入されたあと、電力が余ったため1996年以後IPPも活用が鈍化したことが書かれていたけど、要は今こそIPPを活用すればいいのかも。
けっこう、枠組みとしては便利なものを、それなりにこの二十年ぐらいの間に工夫はしてきているようである。


それにしても、六ヶ所村の核再処理工場が、試運転で二つあるラインのうちのひとつに致命的なエラーが見つかり、使う前から一兆円がどぶに捨てられたという話には、あらためて絶句する。
やっぱり、原子力産業ってのは、もともとどっかおかしかったと思われる。


2002年8月の東電の原発事故で、いったん東電管内の原発が停止したっていう時も、もうちょっと深刻に受けとめて防災やエラー対策を行っていれば、こんなことにもならなかったのかもなぁ。


この本では、原子力への取り組みが遅れた中国電力が、火力の割合が大きいために収支のバランスがかなりきつく、原子力その他をうまく配分した「ベストミックス」が怠られてきたことを批判的に書いてあるけれど、これからはすべての電力会社が多かれ少なかれ中国電力のような経営状態になっていくのかもしれない。


いろいろ考えさせられるし、素人には基本的なことをよく理解し整理するために、ためになる本だった。