三木清 「人生論ノート」

人生論ノート (新潮文庫)

人生論ノート (新潮文庫)

三木清の『人生論ノート』は、私は中学の時にはじめて読んだ。
今、読み返してみると、いかに中学や高校の時に大きな影響を受けたか、そしてその後も、人生のテーマや発想方法において、驚くほど大きな影響を受けていたか、思ってもみないほどだったことが、よく見えてきた。


あらためて、本当に新鮮な文章だと思う。


思っていた以上に、これはなかなか、たいした本である。


中学生でも読める平明な文章だけれど、内容は三十代や六十代や、あるいはそれ以上の大人が読んでも、とても考えを啓発される内容と思う。


もちろん、三木清は歴史的に評価の難しい人物であり、東亜協同体論など、なかなか今日から見た時に評価が分かれる部分もあるかもしれない。


そして、この『人生論ノート』も、一見、あらゆる時代を超えた普遍的な内容であるのと同時に、たとえば「怒りについて」の章など、当時の時代背景と照らし合わせて検討が必要な箇所もあるようにも思う。


ただ、そうした一定の留保や検討すべきことを踏まえた上で、なおかつ、この本はとてもすぐれた、時代を超えて読み継がれるべきものなのではないかと思う。


なんと言えばいいのだろう、現代人が本当に自己を取り戻し、自己を確立して、人間として生きる時に、指針となる一冊なのではないかと思う。


・幸福とは人格である。
・徳とは心の秩序である。
・作ることによって知る。
・人格とは秩序、自由とは秩序である。
・認識は模写ではなく、形成である。
・個性とは、創造する中にあるのであり、闘って獲得すべきものである。
・人生とは形成作用である。人生とは、つくることである。


これらのメッセージは、本当に千金に値する、非常に価値のある、考えさせられる珠玉のような言葉だと思う。


繰り返し、読み、考えていきたい本だと思う。