セント・オブ・ウーマン


だいぶ前に見たのだけれど、ふっと今日この映画のことを思い出した。

この映画の中で、最も印象深いのは、アル・パチーノがガブリエル・アンウォーとタンゴを踊るシーン。

流れる音楽の美しさとタンゴのかっこよさに、高校生の頃にこの映画をはじめて見たとき、本当しびれたものだ。

その後、私が真似事程度にダンスを習って、タンゴなども一応基本のステップを踏めるようになったのは、たぶんこの映画の影響も大きかった気がする。

また、映画のクライマックスのところで、アル・パチーノが演じる退役軍人の老人が、主人公の青年を弁護して、最もみじめなのは魂が潰れた人間だ、彼は困難でも自分の魂をつぶさない道を歩もうとした、どうか見守って助けてあげてくれ、彼の魂を潰さないでくれ、という内容の演説を熱烈にぶつところにもしびれたものだ。

ふっと、高校の時にこの映画を見てから、私はどう生きてきたろうと考える。
そんなに真っ直ぐに順調に来たわけでもなく、ずいぶん紆余曲折、回り道もあったけれど、とりあえず、魂を自ら潰すような生き方はせずに済んできたろうか。
他から潰すような圧力にも、とりあえずうまくかわしたり、抵抗して生きてこれただろうか。

それなりにタンゴのステップも覚えて、いくたびかは踊ってきたし、たいしたことはなくても私なりに甘美な時やめくるめくような時もあったから、まぁまぁ楽しい人生を生きてこれたろうか。

にしても、あの映画の青年の年齢はだいぶ通り越してしまったけれど、まだまだアル・パチーノ演じる退役軍人ぐらいの年齢までには相当時間があるんだよな。
あれぐらいの年齢になった時に、即興でガブリエル・アンウォーみたいな女性とかっこよくタンゴを踊り、即座に熱烈な演説をぶてるように、生きてかんとなぁ。