松本零士 「ザ・コックピット」

ザ・コクピット (1) (小学館文庫)

ザ・コクピット (1) (小学館文庫)


松本零士の「ザ・コクピット」は、もう十数年前にアニメで見たことがあった。

ずっと気になってたので、最近漫画を全巻読んだ。
とてもおもしろかった。

漫画が連載されていたのは、私がちょうど生まれた頃だったようだ。
なんだか、読んだことがないはずなのに、なつかしいような気のする話が多々あった。

単純な戦争反対でもなく、単純な戦争賛美でもない。

戦争のかなしさやむなしさを十分に描きながら、戦場におけるロマンも十二分に描いてある。

一言でいえば、「瘦我慢」の世界だと思う。

平和な世の中になっても、この鉄の信念や瘦我慢は、人たるもの、忘れない方がいいのではないか。
読み終わったあと、そんな気がした。

一方で、戦場で無念に散った人たちの思いも忘れてはなるまい。

武士道や騎士道が、もし第二次大戦にもかろうじてあったならば。
いや、きっとこの漫画に描かれるように、時にはあったのかもしれない。
そんな気持ちにさせられる。

この漫画に描かれるような武士道や騎士道の精神で戦場で燃焼し尽くしたい、と思うのは、やっぱり後世の人間のたわごとなんだろう。
もはや、こうした瘦我慢や武士道・騎士道の世界は、今の戦場にはまったくないのかもしれない。

いろんなことを考えさせられる、漫画の名著の一つだと思う。

私は特に、戦場交響曲の砂津川良一の話が心にのこった。