労働者派遣法改正についての意見

今回の労働者派遣法改正は、今まで継続して働くことができていた専門二十六業務の雇用期間を三年に区切り、雇用の安定を大きく損なうことにつながります。また、他分野の派遣社員については、一生涯派遣社員のままに終る可能性が高まるなど、極めて問題が多い内容と言わざるを得ません。
これは世界人権宣言第二十三条三項の「勤労する者は、すべて、自己及び家族に対して人間の尊厳にふさわしい生活を保障する公正かつ有利な報酬を受け、かつ、必要な場合には、他の社会的保護手段によって補充を受けることができる。」という理念に大きく違反するものです。
すでに1999年および2004年の派遣法改正以来、非正規雇用は大幅に増え、その結果多くの若者たちが安定した雇用を得ることができず、結婚や出産を避けざるを得ない状態となっています。その結果として少子化が進み、日本の国力は大きく衰退しています。人間の尊厳にふさわしい生活を保障する公正な雇用制度の確立こそ、現代日本の喫緊の課題です。
今回の労働者派遣法改正は、この日本の状況を考えれば、状況の解決の方向にはなんら資することなく、むしろ状況の悪化を招くことが懸念されます。
国民の大多数を占める働く人やその家族の生活が不安定化すれば、企業や政府のみが富み栄えるということは決してありえず、長期的に見れば国は必ず弱体化します。一方、安定した雇用を法律がしっかりと支え、働く人とその家族が人間の尊厳にふさわしい生活を送ることができるようになれば、必ずその国は栄えます。
どうか今回の労働者派遣法の改悪を早急に見直し、これ以上の非正規雇用の蔓延を防ぐため、政府には率先して働く人が人間の尊厳にふさわしい生活を確立することができるように、きちんとした正社員登用の道筋と継続的な雇用の確立を、法律として工夫し努力することを切に願います。