手塚治虫 「陽だまりの樹」

陽だまりの樹 (1) (小学館文庫)

陽だまりの樹 (1) (小学館文庫)

手塚治虫の数あるマンガの中でも、特にしぶいのが「陽だまりの樹」。

手塚治虫の先祖にあたるらしい蘭学者と、その親友の武士が主人公。
幕末が舞台なのだが、手塚治虫独自の視点と歴史観が光っている。

これに出てくる西郷隆盛、橋元左内、坂本竜馬らは、どこかあやしげで、うさんくさい。
陽だまりの樹」に出てくる実在の人物で、わりと良く描かれてるのは、藤田東湖山岡鉄舟ぐらいなものである。

そこに、政治や、大義や、庶民を踏みにじる権力というものに、どこかうさんくささを感じる、手塚の批判的なまなざしがあるのかもしれない。

司馬遼太郎の幕末とは大きく異なる幕末の歴史が、そこには再構成されて描かれている。
蘭学者が、この時代に、いかにコレラなどの病と闘い、迷信や因習とたたかって、一人でも多くの人を生かそうとしたか。
そっちの方が、チャンチャンバラバラの幕末の志士の政治史よりも、よっぽど大事な、本当に人を生かしていくものなのかもしれない。