本間正人『経理から見た日本陸軍』(文春新書、2021年)を読み終わった。
面白かった。
軍隊は予算が決定的に必要だそうで、日本陸軍も経理部が重要な役割を担い、大蔵省とさまざまな交渉をしながら、予算の調達とやりくりをしていたそうである。
本書の魅力は具体的な数字のデータがわかりやすく散りばめられているところで、師団長(陸軍中将)と二等兵の給料は81:1ぐらいで、今の金銭価値に換算すると、それぞれ月給242万円と3万円だという話は、戦前の軍隊内の歴然たる格差を数字ではっきり見れて興味深かった。
他にも、軍刀や兵器などの価格も興味深かった。
食料の話も具体的で面白かった。
対ソ戦を想定して満州に急に兵員を大量に移動したものの結局無駄だった「関特演」が費用の面でも壮大な無駄遣いだったことも数字からよくわかり、くらくらさせられた。
また、一般会計の縛りが効いていた頃は、陸軍内部でも経理局や予算班がきちんと常識的な予算の枠内におさめようと予算要求の前に苦慮し、大蔵省も迎え撃つために多大な努力をして一定程度内に軍事費を抑えていたのが、臨時軍事費特別会計が用いられるようになった日中戦争以後、予算のタガが外れて天文学的軍事費に膨れ上がっていったというのは興味深かった。
経理上の不正もしばしば存在し、発覚し処罰されたケースについての話も興味深かった。
軍隊というのは総合的なもので、装備や作戦だけでなく、優秀な経理や物資調達があるかどうかが決定的に重要なのだろう。
予算のタガが外れ、無意味に予算が膨れ上がっていくことが亡国の兆しなのだろうなぁと、読んでいて思われた。