911の特集番組を見た。
http://www.nhk.or.jp/docudocu/program/3444/1453038/
911の時、ホワイトハウスもテロのターゲットという情報が伝わり、ホワイトハウスの人々は騒然となったそうである。
四機目のハイジャックされた飛行機は、乗客の人々の抵抗のため、途中で墜落して実際にホワイトハウスに到達することはなかった。
しかし、四機目のハイジャックされた飛行機がホワイトハウスに向かっているという情報に、政府高官も人々も本当にぎりぎりのところで命の危機を感じていたようである。
そんな混乱の中、当時冷静に行動した、執事長のウォルターズという人にスポットが当ててあった。
ウォルターズは、30年以上ホワイトハウスに勤務していた人物だそうだが、テロを知ると、ホワイトハウスに勤務している大勢の従業員たちに避難を指示し、しかもテロの飛行機が突入して来ると思われる方角の延長線上に逃げないように配慮したそうである。
また、自分はホワイトハウスに残って、事件を知らずに出勤してくる人たちにすぐに帰るように指示し続けていたそうである。
さらに、ずっと食事していないチェイニーやライスらの政府高官のため、すでに離れたホテルに避難していた料理長のシャイブに連絡し、料理をつくるように依頼した。
シャイブは、殺気立った警察たちに射殺される危険とテロに遇う危険を覚悟しながら、2キロの道を歩いてきて戻り、650人分の料理をつくり、政府高官やわずかにホワイトハウスに残っているメンバーや、消防隊員等々に配って回ったそうである。
また、その日、たまたま上下両院の議院を迎えての会食会が夕方から予定されており、机と椅子がホワイトハウス前の広場に設置されていた。
しかし、ウォルターズは、必ず大統領はホワイトハウスに戻ってくると考え、ほんの数人のわずかにホワイトハウスに残っている人々とともに、5時間かけて、ひとつあたり120キロぐらいある机を移動し、片付けて、いつでもヘリが着陸できる状態を整えたそうである。
ブッシュは、911当時フロリダにおり、すぐにホワイトハウスに帰ろうとしたが、チェイニーらの反対でいったんは別の場所に行った。
しかし、夕方頃に他の反対を押し切ってホワイトハウスに戻って来て、いったん付近の空軍基地に降り、そのあとヘリで、無事にホワイトハウス前の広場に到着し、国民に向けて演説したそうである。
その背後には、ウォルターズらの尽力があったことを、私はこの番組ではじめて知った。
もしウォルターズらが手際よくあらかじめ広場をかたづけていなければ、ヘリが着陸できなかったかもしれない。
危機に際して、持ち場を離れず、できうる限りの努力を尽す「普通の人々」こそが、本当の英雄なんだろうなぁと、番組を見ながら思った。
もちろん、ウォルターズやシャイブらとともに、WTCで救助活動にあたった消防士や、四機目の飛行機の中でテロリストと格闘し、飛行機がホワイトハウスに到達することを防いだ乗客の人々も、本当の英雄だったと思う。
にしても、あれから16年も経つのに、未だに世界が報復の連鎖が終わらない。
「普通の人々」が、普通に暮らせる世の中が、本当は一番なんだと思う。
ブッシュやチェイニーらは、率直に言えば、そうした世の中を取り戻すことに失敗したし、かえって事態を悪化させたようにも思う。
また、この番組でも言っていたけれど、ハイジャックされた四機目は、結局は乗客の抵抗で途中で墜落したため撃墜されることはなかったけれど、チェイニー副大統領はすでに撃墜命令を出していた。
民間人の乗客が乗っているというのに、政治というのは非情なものだとつくづく思うし、そのような撃墜命令が出されているにもかかわらず、ホワイトハウスや国を守るために自らの身を犠牲にしてテロリトストと闘い墜落して行った飛行機の乗客の人々は、なんとも哀れなものだと思う。
「普通の人々」が英雄的な勇気を発揮しても、たとえそれが美談に祭り上げられたとしても、しばしば報われないよなぁとは思う。
最近ブッシュを再評価する声があがっているそうだけれど、本当に再評価すべきは、こういう「普通の人々」だったんだろうなぁと思った。
政治は本当にどこまでそれらの人々の奉仕や思いに応えていたのか、その後の経緯を見るとかなり疑問に思わざるを得ない。