予想外にとても面白かった。
利益打算で節操なく動くイギリス王ジョンやフランス王フィリップ。
呪いで恫喝し、両国の和平よりも戦争を勧める法王特使の枢機卿パンデルフ。
両国の間で心を痛めるブランシュ王女の悲痛なセリフや、節操のない政治権力に翻弄されるアーサー王子の母コンスタンスの嘆き。
そして、斜に構えてややニヒリスティックながら活力に満ちた私生児ファルコンブリッジ。
それと、なんとも心痛むのは、幼いアーサー王子の、暗殺を目前としたセリフの数々。
やや急な幕切れがいささか残念だけど、素材としてはとても面白い作品と思う。
メジャーな作品だけでなく、この作品のようにあんまりメジャーではない作品に関しても、天才のきらめきがふんだんに盛り込まれているとは、あらためてシェシクスピアはすごいと思った。
にしても、ジョン王が主人公ながら、「マグナ・カルタ」は一言も言及されていない。
やっぱり、チューダー朝の頃は、マグナ・カルタは忘れられていたのかもなぁ。

- 作者: ウィリアム・シェイクスピア,小田島雄志
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 1983/10/01
- メディア: 新書
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