塚本虎二の本を読んでの雑感

戦前・戦後に活躍したキリスト者で、内村鑑三の弟子だった塚本虎二という人の本を読んでいたら、二二六事件の時にすぐに書いた文章の中で、「公義と真理とに対する私の熱心の不足が、この不祥事を生んだ。」とみずからを責めていて、驚いた。
(塚本虎二『宗教と人生』(伊藤節書院、昭和三十八年、119頁)


もちろん、塚本は一市民に過ぎず、べつに政治家でもなんでもない。
しかし、このような態度こそが、なんといえばいいのだろうか、知識人や義人といえばいいのだろうか、そういった人の本当は持っている感性や生き方というものなのかもしれないと読んでて思った。

オウム真理教事件の時や311の時に、いったい日本の知識人や宗教家の中のいくばくの人が、二二六の時の塚本虎二のように「公義と真理とに対する私の熱心の不足が、この不祥事を生んだ」と自分に対して思ったのか、正直よく知らない。
中にはそういう人もいたかもしれないが、あまり多くはなかったように思う。


ほんの少しは、この塚本の「熱心」に学びたいものだと思った。


あと、この本を読んでて面白かったのは、戦前の昭和一桁の頃も、毎年一万五千人が自殺していると書かれていることである。


昔から日本は自殺者数がやたら多い国なのかもしれない。


塚本虎二は、自殺をなくすために、


一、 明白なる来世観の確立
二、 剛健なる道徳心の養成
三、 強き社会正義


の三つを挙げているが、未だにこのどれも、あんまり日本には十分には確立されていないのかもしれない。


あと、結局中止になった東京五輪の準備の様子も書かれていて、「電車内の授乳禁止」が行われたと書いてあって、戦前の日本ってのはそんな感じだったんだなぁとほほえましく思った。


時代によって変わるものもあれば、変わらないものもあり、引き続き大切な課題というのも多々あるのだろうなぁと読みながら思った。