「ゲーテ詩集」

ゲーテ詩集 (新潮文庫)

ゲーテ詩集 (新潮文庫)



すばらしかった。

特に、繰り返し読みたいと思ったのは以下の詩。

本当に智慧のことばと思う。



省察


ああ、人は何を願うべきか。
じっとしていた方がよいか。
しっかり自分を守っていた方がよいか。
それとも活動する方がよいか。
ささやかながら自分の家を建てるべきか。
それともテントの下に住むべきか。
かたい岩でさえ揺らぐものを。


一つのことがだれにでもあてはまりはしない。
めいめい自分のすることに注意せよ。
めいめい自分のいるところに注意せよ。
立っているものは倒れないように注意せよ。


「神性」


人間は気高くあれ、情け深くやさしくあれ!
そのことだけが、
我らの知っている
一切のものと
人間とを区別する。


我ら知らずして
ただほのかに感ずる
より高きものに幸あれ!
人間はその高きものに似よ
人間の実際の振る舞いが
それを信じさせるようであれ。


自然は
無感覚なり。
太陽は
善をも悪をも照らし、
月と星は
罪人にもこの上ない善人にも
同様に光り輝く。


風と溢るる流れと
雷鳴とあられとは
ざわめきつつ進み、
だれ彼となく捕えては
急ぎ通り過ぎる。


同じように運命も
人々の中に探りの手を入れ、
少年のけがれない
巻き毛を捕えるかと見れば、
罪を犯せる
はげ頭をも捕える。


永劫不変の
大法則に従い、
我らはみな
我らの生存の
環をまっとうしなければならぬ。

ただ人間だけが 
不可能なことをなし得る。
人間は区別し
選びかつ裁く。
人間は瞬間を
永遠なものにすることもできる。


人間だけが、
善人に報い、
罪人を罰し
癒し救うことができる。
またすべての惑いさまよえる者を、
結びつけ役立たせる。


我らはあがめる
不滅なものたちを。
彼らも人間であって
最上の人間が小さい形で
なし、あるいは欲することを
大きい形でなすかのように。


気高い人間よ、
情けぶかくやさしくあれ!
うまずたゆまず、
益あるもの正しきものをつくれ。
そしてほのかに感ぜられた
より高きもののひな型ともなれ!



「シュタイン夫人へ(私たちはどこから)」


私たちはどこから生れて来たか。
愛から。
私たちはどうして滅ぶか。
愛なきために。
私たちは何よって自分に打ちかつか。
愛によって。
私たちも愛を見出し得るか。
愛によって。
長いあいだ泣かずに済むのは何によるか。
愛による。
私たちをたえず結びつけるのは何か。
愛である。


「処世のおきて」

気もちよい生活を作ろうと思ったら、
済んだことをくよくよせぬこと、
めったに腹を立てぬこと、
いつも現在を楽しむこと、
とりわけ、人を憎まぬこと、
未来を神にまかせること。



「ズライカ(民もしもべも)」
 

民もしもべも征服者も
みな常に告白する。
地上の子の最高の幸福は
人格だけであると。
 

自分自身をなくしさえせねば、
どんな生活を送るもよい。
すべてを失ってもよい、
自分のあるところのものでいつもあれば。