シェンキェーヴィチ 「クオ・ワディス」

クオ・ワディス〈上〉 (ワイド版岩波文庫)

クオ・ワディス〈上〉 (ワイド版岩波文庫)

クオ・ワディス〈上〉 (岩波文庫)

クオ・ワディス〈上〉 (岩波文庫)


上中下三巻を読み終わって、本当に面白かった。

なかなかこれほど面白い文学作品はないと思う。

手に汗握るハラハラドキドキ感と、深い感動の両方がある、珍しい作品と思う。

古代ローマのネロの暴政とキリスト教の台頭を背景に、本当に複雑な要素を一本の大河のようにまとめてある。

パウロが、キロンに言う、キリストの愛は海のように深いので、どれだけ石を投げてもその海にはなんということもなく包まれていく、キリストの愛は空のように広いので、私もあなたのすべてのものが包まれている、という意味の話は、深く心に残った。

ネロの馬鹿殿ぶりの壮絶さも、そしてキリスト教徒たちの殉教も、どちらもただただあらためて驚かされるばかりだったが、かつて本当にこのような時代もあったのだろう。

そして、そんな闇のような時代にも、確実に、思いもよらないような仕方で、光が広がっていったのだろう。

人生の間に一度は読んでおいた方が良い小説と思う。