絵本 「エルトゥールル号の遭難」


すばらしい絵本だった。

非常に詳細に、エルトゥールル号のことがよく調べてあり、日本に至るまでも何か月も途中で修理したり、非常に苦難の船旅だったことがわかった。

しかし、インドやシンガポールなどでエルトゥールル号は大歓迎され、途中のさまざまな国で、特にイスラム教徒から、熱烈に歓迎されていたそうである。
何十万という人々がエルトゥールル号を見学に寄港地では訪れたそうだ。

オスマン・トルコ帝国にとって、単に日本への返礼だけでなく、道中の世界中のイスラム教徒たちと親善を深め、トルコの栄光を輝かせるための一大行事だったそうである。

そのため、本来ならば、老朽化している船体のことを考え、事前にもっと根本的に修理したり、シンガポールにとどまって日本への少人数だけ別の船で行くという手段があったのに、無理をしてそれらの案は却下された。
いわば、エルトゥールル号の遭難は、トルコの上層部による人災だった。

それらのことは、今まであんまり考えたことがなかったので、とても考えさせられた。

そして、それは有名な話ではあるけれど、和歌山の大島村の人々が、遭難したエルトゥールル号の救助のために全力を尽くし、自分たちの乏しい食料を無償で分かち与え、親身に救助した姿には本当に胸を打たれる。
これこそ、本当の日本の心であり、子子孫孫まで誇るべき心だろう。

それからずっと時が経った、イラン・イラク戦争の時に、日本人の脱出のためにトルコがこの時の恩返しと飛行機を出動させてくれたのは有名な話であるが、あらためて胸を打たれる。

著者が言うとおり、国というよりも、大島村の人々の個人個人の人間としての優しさや無償の行為こそが、ずっとそののちまで多くの人の胸を打ち続けるものなのだと思う。