「ラビが教えるユダヤ流成功の極意」

ラビが教えるユダヤ流成功の極意

ラビが教えるユダヤ流成功の極意

  • 作者: ラビ・リーバイ・ブラックマン,サム・ジャッフェ,嶋田水子
  • 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
  • 発売日: 2010/03/20
  • メディア: 単行本
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とても面白い、ためになる本だった。


本書は、世界の全人口のわずか0.02%に過ぎないユダヤ人が、なぜ世界長者番付トップ四百のうちの十%以上、巨大企業五百社のCEOリストの十%以上、ノーベル賞受賞者の三十%以上を占めるのか、という問いに対して、その秘訣の根底にあるのは「トーラー」、つまり成文律法と口伝律法を合わせた、ユダヤの伝統的な宗教的叡智があるという。
それによる、高い倫理と宇宙の法則への理解が、これらの活動の根底にあるという。


この本を読むと、たしかに、なるほど、と思った。


いくつか、トーラーの知恵が書かれているのだけれど、その中でも、とても心に残ったのは、以下のエピソード。


エジプトを脱出したモーゼの一行に、ファラオの軍勢が迫ってきた時に、海辺に追い詰められたユダヤの人々は、当然恐怖でいっぱいになった。


その時、人々の反応は四つに分かれたという。


一つは、ファラオに降伏しよう、という態度。
二つ目は、闘って死のう、という態度。
三つ目は、自殺しよう、という態度。
四つ目は、何もせず祈ろう、という態度。


モーゼは、この四つの態度の、どれも採らなかった。


そして、「恐れるな」と述べ、海に向かって前に進んだ。


すると、有名な話だが、海が両側に分かれて、その間の道を通っていくことができた。


もちろん、この奇跡を信じる、信じない人はそれぞれだし、このような奇跡が実際にあったのかどうかは、科学的にはにわかには信じがたい。


しかし、人生の真理に適用した場合、とても納得のいく話だと思う。


(実際、以前見たテレビで、これは潮の干満を利用したという説もあれば、サントリーニ火山がその時爆発して、洪水前の潮の引きを利用したという説もあるので、あながちつくり話とは言えないのかもしれない。)


この時の、モーゼの言葉を正確に引用すると、出エジプト記の第十四章の第十三、十四節なのだが、


モーセは民に答えた。
「恐れてはならない。
落ち着いて、今日、あなたたちのために行われる主の救いを見なさい。
あなたたちは今日、エジプト人を見ているが、もう二度と、永久に彼らを見ることはない。
主があなたたちのために戦われる。
あなたたちは静かにしていなさい。」」


という言葉である。


この「恐れない」ということが、とても大切のようである。


すると道が開ける。
恐れず、前に進むこと。
それが、人生の秘訣だそうである。


また、行動を伴わない祈りがここでは退けられているところも興味深い。
「行動を伴う祈り」、前進しつつ、確固として神に信頼し、行動しつつ祈ることこそ、モーゼの態度であり、ユダヤの民の祈りというものなのだろう。


他にも、この本の中で教えられたことに、カバラの伝統の中には、「内なる意志」と「外的な意志」という言葉があるというのは、とても興味深かった。
内なる意志とは、他者を助けたいという気持ちや、自分より高いものとつながりたいという要求であり、その観点から識別できるそうである。
人間の魂の深い次元にあるものだそうである。


この内なる意志と外的な意志が調和していると、人間は強い力を発揮できるそうである。
ゾハールというユダヤの秘伝書には、「人の意志を妨げるものは何もない」と書かれているそうだ。


また、モーゼはなぜ謙虚だったか、ということが分析されており、自分の能力や才能は、すべて神から与えられたものだと心得ていたからであり、どんなに奇跡を起こして成功したあとも、他の人の忠告に謙虚に柔軟に耳を傾け、自分のやり方を改めて改善することをいつも心がけていた、ということを指摘してあり、なるほどーっと思った。


また、柴の中の炎から、神に呼びかけれた時、モーゼは「私は何者でしょうか?」と尋ねたのに対し、モーゼが神のお告げをファラオに伝えると、ファラオは「主とは何者か?」と尋ねたところに、両者の態度の対照が際立っており、いわばモーゼは神を中心に、自分を謙虚に問うことができたのに対し、ファラオは傲慢にもすべて自分を中心に考えていた、という話も、なるほどーっと思った。


モーゼの交渉術について触れ、相手の気持ちやニーズを深く理解することこそ交渉の秘訣である、ということが述べられていたことにも、なるほどっと思った。


さらに、失敗にどう立ち向かうか、ということについて、さまざまなためになることが書かれてあり、とても参考になった。


ユダヤにおいては、挫折は失敗ではなく、成功の前兆であると考えるそうである。
なぜならば、挫折によって、自分の考え方や魂のありかたを見つめ直し、修正し、その結果成功することができるからである。


「状況は考えるものではない、自分で創り出すものである」ということも教えられるそうだ。


問題は失敗ではなく、どう対応するか、である。


「魂の精査」という、中世ユダヤ神秘主義思想の方法があり、これを何回もすると、状況を改善できるそうである。


方法はいたって簡単。


1、ミスを認め、それに対して責任をとる。
ミスを犯したことを認識し、ミスの責任をとり、それが事業や生活に及ぼし得る影響を考える。


2、考え方の間違いを認識する。
ミスを引き起こした考え方の誤りを突き止める。


3、自分自身と周囲に対して誤りを認める。
周囲に対して自分の間違いを認めれば、同じミスを繰り返すことはより難しくなる。


4、同じ誤りは繰り替えさないと自分に約束する。
間違った考え方を続けないと自分に誓う。覚え書きをつくるのも良い。


この「魂の精査」を繰り返せば、ミスを修正し、挫折は成功の予兆となり、成功に変わっていくそうである。


失敗とは、状況そのものではなく、考え方ある場合が多い、というのも、なるほどーっと思った。


思慮的楽観主義こそ成功の秘訣。
疑念はマイナスのパワーを持つので、「何ものをも恐れない」ことこそ大切だそうである。


また、心の平和とポジティブな気持ちを求めるならば、心の内面に目を向けることを忘れないべきだそうである。


さらに、ユダヤにおいては、「主の道」と呼ばれるものがあり、別の言葉で言うと、賢者の道や中道とも呼ばれるそうだが、感情ではない、理性に従う道をそう呼ぶそうだ。
これこそが、成功への道だそうである。


さまざまなビジネス界の実際の成功や失敗の事例も数多くこの本には書かれているのだけれど、レヴ・レヴィエヴという一代で巨万の富を築いたイスラエルのダイヤモンド企業の人の話など、面白かった。


凡百の成功哲学より、よほどためになった、良い本だった。