遠藤周作 「深い河創作日記」

『深い河』創作日記

『深い河』創作日記


『深い河』を書き上げるまでの三年間の遠藤周作の日記。


これを読むと、最初の頃の設定とかなり出来上がりは変わっていったことに驚く。


また、登場人物の設定や、それらの登場人物を実際に小説によく描くためにはかなり苦労したみたいで、かなり経ってから、「固かった氷塊がとける」ような思いがして、やっと自由に書けるようになったという記述も興味深かった。


「人間の哀しさが滲む小説を書きたい。それでなければ祈りは出てこない。」
(55頁)


という言葉も、心に響いた。


また、日記だけでなく、この本には、「宗教の根本にあるもの」という短い文章も収録されており、それもとても興味深かった。


遠藤周作が言うには、宗教とは無意識のものであり、自分を生かしている大きな生命を意識することだという。
何かしら人生において見えない働きとなって、自分の人生を後押しししてくれるもの。
その無意識的なものへの意識が宗教だという。
それは、歴史や文化によってさまざまな形をとるが、その点ではどの宗教も同じであるという。
そして、復活とは蘇生と異なり、自分を生かしている大きな命に戻ることだという。


『深い河』を読んだ後で読むと、興味深く読める一冊だと思う。