- 作者: アブラハムクーパー
- 出版社/メーカー: 潮出版社
- 発売日: 2002/03/01
- メディア: 単行本
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第二次世界大戦中、たった一人で十万人のユダヤ人の命を救ったラウル・ワレンバーグについての絵本。
とても感動した。
ワレンバーグはスウェーデンの外交官。
1944年、ナチスが占領するハンガリーのブダペストに赴き、外交官としての特権で、スウェーデンのパスポートをユダヤ人たちに配った。
そうすれば、ナチスに殺されずに済み、保護することができたからだった。
ワレンバーグは、一人でひたすらパスポートを発行してユダヤ人たちに配り続けた。
強制収容所に向かって出発するためのユダヤ人を乗せた貨物列車にも駆けつけて、貨物列車の屋根の上に登り、窓からパスポートを配りいれて、パスポートをもらった人は貨物列車から降りるようにさせた。
また、何百人ものボランティアを組織し、スウェーデンの国旗を立てた建物をブダペスト市内に何か所か用意し、そこにユダヤ人の人たちを迎えて食事や眠る場所を用意した。
ワレンバーグは、どのような人にも分け隔てなく、決して人種で憎むようなことをせず、ただ一つ、人々が苦しむ姿を見ることを憎んだそうである。
このようにユダヤ人救出のために超人的な働きをしたワレンバーグは、やっとナチスがソビエト軍に追い出されて、ユダヤ人たちも解放され、これでやっと安心という時に、ソビエト軍にスパイ容疑で逮捕され、その後は行方不明になった。
おそらくソビエトの強制収容所で亡くなったと言われている。
まだ三十代の前半でありながら、これほどの働きをしたワレンバーグには、本当にただただ驚嘆し、感嘆させられる。
私がはたして、同じ状況や境遇だったとして、これほどの勇気を発揮することができたろうか。
ワレンバーグは、スウェーデンでのんびり暮らす方が、自分自身のためにはずっと安全でラクな道だったろう。
ただ、困っている人々を見過ごせないと思い、このように生き、死んでいったのだろう。
「一人の命を救うものは世界を救う」
(Whoever saves one life saves an entire world.)
というユダヤのことわざがあるそうである。
ワレンバーグは、十万人を救ったとすれば、十万もの世界を救ったと言えるのかもしれない。
ヒトラーやスターリンを見ていると人類に絶望しかける。
しかし、ワレンバーグのような人により、人間はなんとすばらしい生き方もできるものかと教わる。
遠く及ばぬながら、ワレンバーグのような生き方をほんの少しでも真似したいと、この絵本を読んで思った。