絵本 「すみれ島」

すみれ島 (新編・絵本平和のために)

すみれ島 (新編・絵本平和のために)


大戦末期。


毎日のように、小学校の上空を、特攻機が通り過ぎていく。


手を振る子どもたちに、時には翼を振ってこたえて。


子どもたちは、それが片道の燃料しか持たない特攻機とは知らない。


すみれの花をいっぱい積んで、ある時子どもたちが航空隊の基地に贈り物として届けた。


若い兵隊さんからの手紙の返事が来て、小さい時に遊んだすみれの花を使ったすもりとりをひさびさに友人とやり続けたこと、そのため毛布がすみれの花だらけになって、その中で眠り、かすかな良い花の香りがしたこと、


が書かれていた。


それを子どもたちに読み聞かせながら、学校の先生は涙が止まらず、はじめて詳しく特攻機のことを子どもたちに教えてあげた。


それから、子どもたちは花がなくなるまで、すみれの花をつみつづけ、送り続けたそうである。


南の海の小さな無人島のひとつに、いつからか、一面にすみれの花が咲くようになった。
それは、その花を最後まで胸に抱き、散っていった特攻機の一機のうちに交じっていたすみれの花の種がその島で芽吹いたものだそうである。


というところでこの絵本は終わっていた。


不覚にも、涙を禁じ得ない、名作絵本だった。


この本の帯に、「人は非日常に出会ってはじめて日常のすばらしさ、美しさを知る。」という一節が書いてあった。


本当にそのとおりと思う。