絵本 「おしゃれなサムとバターになったトラ」 (ちびくろサンボ)

おしゃれなサムとバターになったトラ

おしゃれなサムとバターになったトラ

この本は、「ちびくろサンボ」の物語を、奴隷制についての歴史や文学の本を多数執筆しているジュリアス・レスターがリメイクしたものである。


ちびくろサンボ」は、小さい時にもちろんよく知っている物語で、トラがバターになるところが面白くて好きな物語だった。


それがどういうわけ、よく知らないうちに、黒人差別につながるということで絶版になっていたそうである。
そういえば、私が小学生の頃、カルピスの元々のマークが黒人差別につながるとして変わったということのおぼろげな記憶がある。
あの頃、ちびくろサンボも絶版になったそうだ。


この「おしゃれなサムとバターになったトラ」は、もともとの1899年に出版された当時の「リトル・ブラック・サンボ」を元に、若干アレンジしたものだそうである。


主人公のサムは、動物たちがお店を開いている市場で、かなり派手な色づかいの服や傘や靴を親に買ってもらい、よろこんで学校に着ていこうとする。


しかし、通学の途中の道に、虎があらわれて、サムの命を狙い、サムは一つずつ持っているものを与えて、なんとか命だけはとりとめる。


合せて五匹の虎が次々と現れて、そのおかげでサムは持ち物をすべて奪われてしまう。


しかし、虎はお互いに争って樹の周りをぐるぐる回りだし、バターになる。


サムはバターを持って帰って、家族でホットケーキをおいしく食べる。


という話である。


あとがきで、ジュリアス・レスターも言うように、この物語がなぜかくも愛されるかは、やはりこの物語に何かがあるからだと思う。


牽強付会的にもし解釈するならば、サム(サンボ)が黒人であるということから考えれば、この獰猛な虎たちは白人の奴隷所有者や資本家たちなのかもしれない。
サムが、求められるままに持ち物を与えるが、最終的にはすべて取戻し、バターになったトラを食べるというのは、非暴力で最後には勝つという黒人の信念や願いを書いたものだったのかもしれない。


もちろん、原作者はそこまで考えずに書いたのかもしれない。
しかし、直感的に、あるいは無意識のうちに、そのようなものをこの物語に読みこんだからこそ、アメリカや多くの世界中でこの物語が愛されてきたのかもしれない。


あらためて読むと、いろいろと考えさせられる物語だと思う。