絵本 「ひろったらっぱ」

ひろったらっぱ (新美南吉ようねん童話絵本)

ひろったらっぱ (新美南吉ようねん童話絵本)


戦争で手柄を立てて有名になりたい。
そう思って、戦争があっている地域へと旅をする若者。
途中、らっぱをひろう。

はじめは、人々を駆り立てて、戦争に行こうとする。

しかし、戦争のために荒れ果てて、疲れ果てている人々を見て、考えを変える。

平和のために、みんなの元気を出すために、麦の種を植えて、畑を耕し、育て、収穫するために、若者は率先してらっぱを吹き、働く。

やがて、黄金色の一面の麦畑ができる。

この新美南吉の物語に、葉祥明さんがとても美しい絵をつけて、素敵な絵本に仕上がっていた。

私が驚かざるのをえないのは、新美南吉がこの物語を書いたのは、戦時中、日中戦争のさなかだったということである。
どれほどの勇気と決意が必要だったことだろう。

思えば、敗戦後の日本というものは、このような思いでやってきたのかもしれない。
そして、いつの間にかまた、その時の痛切な思いを忘れてしまってきたのかもしれない。

らっぱは使い方によって、戦争のためにも、平和のためにも使える。
どちらに使うかは、結局は、人の心次第なのだろう。