- 作者: エスター・ニセンタールクリニッツ,バニーススタインハート,Esther Nisenthal Krinitz,Bernice Steinhardt,片岡しのぶ
- 出版社/メーカー: 光村教育図書
- 発売日: 2007/01/01
- メディア: 大型本
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本当に素晴らしい本だった。
この本は、エスターさんというポーランドの中部で生まれ育ったユダヤ人の女性が、何十年も経って年をとってから、子どもの時にあった出来事を一枚一枚刺繍にしてさまざまな場面をよみがえらせ、それに文章をつけて一冊の絵本としてあるもの。
平和で、貧しいながらも幸せに暮らしていたユダヤ系ポーランド人の家族が、ナチスの占領以後、どれほど苦しい目にあったか。
世間の冷たさや、意外な人の親切さや、あたたかな人もいること。
どんなに苦しくとも、一回夢の中で祖父に出会った時以外は決して泣かず、生きのびるために知恵と勇気を発揮した主人公の姿。
淡々と、事実の場面と回想だけで綴られているこの本は、どんなものよりも雄弁に、あの時にあったことが何だったのかを伝えてくれる。
それはきっと、この一枚一枚の刺繍に、作者のエスターさんの深い祈りがこめられているからなのだろう。
今もってナチスを肯定したり支持する人が世の中には時折いるようだが、この絵本を読んで欲しい。
そして、また、ナチスやポーランドやユダヤ人と、直接は一見あまり関係日本の私たちも、どれほど人が残酷になりうるか、そのことがどれほど人に哀しみをもたらすか、戦争や平和が何なのか、想像力を得るために、一度読んだ方が良い本なのだと思う。
良い一冊だった。